F1を山梨のイベントに


毎日新聞No.274 【平成20年11月7日発行】

  先月、富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催された自動車レースの最高峰F1日本グランプリを生で観戦することができた。昨年に続き2年連続の開催で、決勝当日は10万5000人の観客がその迫力に歓喜した。
  大会期間中延べ21万3000人もの観戦客が押し寄せたが、子どもの観客が少ないことが気になった。主催者は、会場周辺地域への配慮から大会初日に地元小山町などの小学生ら3000人を招待しているが、それ以外の子どもたちについては配慮もなく、3歳以上は観戦券を購入することになる。F1の観戦券は国内レースの価格の2倍から10倍以上になることもあり、気軽に子どもを連れてファミリーで観戦できるイベントとはいえない。世界中のファンを熱狂させ、多くの子どもたちに夢をあたえる世界大会が、国内で開催されているにもかかわらず、子どもたちが気軽に観戦できないのは残念である。

  サッカーや野球、オリンピックなどの大会では、現地へ行けない又はチケットを入手でいないファンのために、スタジアムや街頭などにある大型スクリーンを利用して観戦を行うパブリックビューイングを開催している。本県においても、県内にそのようなイベントを行える場所を確保し、サーキットへ足を運べないファンや子どもたち、観光客、地元住民が気軽に応援できるようなイベント企画が必要ではないか。
  また、次回から三重県鈴鹿サーキットとの隔年開催が決定しており、次に富士スピードウェイに戻ってくるのは2010年となる。富士五湖周辺では大会期間中、旅館やホテルが満室となるなどF1効果が表れていただけに宿泊客の減少が懸念される。次回の大会に向けF1に関連した誘客イベントの開催は必要となる。

  F1という世界的なイベントの集客力を利用し、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキットとの連携を図りながら、F1観戦客の宿泊地として、またF1を観戦できないファンや子どもたちが気軽に応援できる場を本県が提供することにより、F1が新たな観光資源となり「山梨に行けばF1が楽しめる」そんな親しみやすいイベントとして定着して欲しい。

(山梨総合研究所 研究員 野﨑 三則)