四輪プラスニ輪の生活
毎日新聞No.276 【平成20年12月5日発行】
昨年の暖冬に続き、今年も暖冬の気配が強まっている。暖かい冬は暖房費が少なくなるなどプラス面もあるが、昨今の厳しい家計にはどう影響するだろうか?
現在、世界同時不況と投機資金の一斉引き揚げにより原油価格は低下したが、「安価な原油を大量に消費する時代は二度とこない」と言われている。これは従来型の油田から生産される原油に限界が見えてきているためだ。現在、世界の原油可採年数(現在の生産量で原油が継続的に採掘できる年数)は40から50年程度だが、大油田の発見に支えられ、この年数はおおむね半世紀の間変化が無く、「いつかは無くなる」ことに注目は集まらなかった。しかし、新たな大油田は近年見つからなくなり、原油枯渇が長期的に現実味を帯びてきている。
もちろん、オイルサンド(原油を含む砂、埋蔵量が多く注目されるが、精製に大量の水必要とし、環境面の問題がある)、オイルシェール(石油を含んだ石)、オリノコタール(超重質油)など「非従来型」原油が期待されているが、これらは製品化コストが高いため放置されていたもので、安価な原油供給にはつながらず、再び超長期で安定安価な原油価格が実現することは難しいであろう。「石油消費量の削減」および「脱石油」は引き続き重要な課題である。
そこで、石油消費量削減策の一つとして「四輪プラスニ輪の生活」を提案したい。現在、日本製の原動機付自転車の燃費は、カタログ値でおおむね80㌔㍑(レギュラーガソリン)、人気のハイブリッドカーも足元にも及ばない。仮に自動車の燃費を10㌔㍑、原動機付自転車の燃費を65㌔㍑とし、1日往復25㌔の通勤、雨天率20%として雨の日は車に乗り、年間200日通勤利用すると、年間300㍑強のガソリン消費が削減できる。維持費を除いても、現在年間3万円くらいの差額が出る。季節柄寒くて二輪は嫌だという方は、スクーター+風防やフットカバーを、また、ダウンジャケットなど防寒具を選ぶのも楽しいものだ。
現代社会でオンデマンドのパーソナルモビリティが必要不可欠であることは否定しない。ただし、それが四輪のみである必要はない。知恵を絞り、まず実行することが大切である。
(山梨総合研究所 主任研究員 小笠原 茂城)