産業振興とエネツアー


毎日新聞No.279 【平成21年1月23日発行】

 100年に一度という金融危機が世界を襲っている。米国、欧州、日本に共通する雇用と景気対策は、再生可能エネルギーの普及促進、社会政策は健康・医療システムの電子化によるサービスの効率化である。
 今後とも、中国、インドなどの新興国のエネルギー消費は伸びる。地球温暖化対策は地球全体の課題であり、再生エネルギーの導入や資源効率を加速化するための法的、財政的手段や公的調達、認証など様々な政策手段が主要国に導入されることになろう。
 これら施策は目新しいものではなく、一部の国や地域では、すでに実行されている。金融危機によって、初めて世界的な規模での具体的な取り組みが開始されようとしている。

  日本と同様、欧州においても、地方社会における再生可能エネルギーの導入が盛んである。例えば、北イタリアの南チロル地方(人口46万人)は、主要産業は観光であるが、再生可能エネルギーと省エネルギー建築に対する取り組みも盛んである。現在、消費エネルギーの約半分が再生可能エネルギーであり、2015年には、消費エネルギーの75%を再生可能エネルギーでまかなう計画である。
 再生可能エネルギー施設は、800の水力発電所のほかバイオマス、風力、ソーラー、地熱など様々な利用施設がある。また、再生可能エネルギー関連企業は187社、省エネ建築に関係する企業は150社ほどである。
 南チロルでは、再生可能エネルギーセンターが中心となって、研修会、省エネ住宅展示会、エネルギー効率調査などを実施しているが、展示会にあわせて、再生可能エネルギー施設や省エネ住宅を説明つきで案内するエネツアーを行っている。これは、再生可能エネルギーについて実践的な情報を提供することと、地域技術を紹介し、顧客を獲得することをねらいとしている。

  県内には、近年様々な再生可能エネルギー関連施設が整備されつつある。また、地域工務店による省エネ住宅、エコ住宅などの取り組みも見られる。再生可能エネルギー関連産業の育成の機会として、また次世代の環境学習の場としてエネツアーの開催なども一つの方法であると思われる。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)