働くということ


毎日新聞No.282 【平成21年3月6日発行】

  若者の仕事に対する意識が気がかりである。厚生労働省の統計によると、就職後3年以内の離職率が中卒約7割、高卒約5割、大卒約3割である。この比率は平成7年を境に定着している。
 当時の出来事を拾ってみると、「阪神・淡路大震災」「地下鉄サリン事件」「為替市場で1ドル=79.75円」「細川連立政権の挫折と政治不信」など、時代の流れを大きく変えるような出来事があった。予測不能、不確実な将来に対する不安を誰もが持ち始めた時代であったような気がする。 

  さて、民間企業が実施した「大学生の就職意識調査」の就職観をみると、氷河期と言われた02年卒では「楽しく働きたい29.4%」がトップである。08年卒では「同35.4%」と6ポイント上がっている。「楽しく働きたい」の意味をどうとらえるかにもよるが、実際に就職すると「思っていた仕事と違う」「自分の夢を実現できない」といった不満があるようだ。彼らは、「自分に適した仕事があるはず」「それを探し続けることが大切である」との気持ちに駆られ、迷い続けて離職転職を続けることが多いのではないだろうか。
 しかし、仕事とは、生きることの目的や意義を問い続けることである。それは社会人としての自覚であり、職業人としての使命感、責任感であるように思う。

  「楽しく働きたい」とは、決して和気あいあいと笑い声が絶えないような職場ではない。そこは仕事を通して自らの成長を図り、自らの夢を実現しようとする過程である。忍耐も寛容も努力も生きる上でのすべてが要求される。従って、厳しいことが常態である。このことを忘れてはいけない。
  そんな中、しっかりした就職観を持った大学生がいることは心強い。当研究所は毎年インターンを受け入れている。終了後のレポートを見ると仕事場に身を置いたことによる変化が分かる。「集中力がついた」「就職、結婚、専業主婦と合わせ、キャリアを積みたい」「働くことへの喜びを実感し、就職への意欲がわいた」「人生において、積極性の大切さを感じた」など大変前向きな感想が寄せられる。
  「石の上にも3年」である。仕事に対する意義を考え自己実現を図って欲しい。

(山梨総合研究所 専務理事 福田 加男)