「健康」による地域活性化


毎日新聞No.283 【平成21年3月20日発行】

  「健康寿命」という言葉をご存じだろうか?65歳以上の高齢者が要支援・要介護認定を受けずに健康で自立して生活できる期間であり、平均寿命から寝たきりになってしまった年数を引くことで求めることができる。
  先日発表された山梨県立大学・小田切陽一教授の調査によると、山梨県は全国トップレベルにある。山梨特有の無尽等の人間関係を醸成する社会的ネットワークが強いことが、健康寿命が長い要因となっている。しかし、この健康寿命が長いという事実を認識している県民は少ないのではないか。全国では「健康」というキーワードで、地域活性化を目指す自治体が目立ち始めている。

  その一つに新潟県がある。「健康ビジネスといえば新潟県」といったブランド化を目指し、06年に「健康ビジネス連邦」を立ち上げた。昨年には、全国初の健康ビジネスサミットを開催し、注目を集めている。
  このプロジェクトでは、積極的に企業・大学・病院等の連携や他業種からの健康産業への参入を推進している。今年度は健康ビジネスの推奨事例として「三ツ星」モデルを27件も輩出している。具体的には、大学と食品会社が連携し、高齢者等の被災弱者向け非常食を開発したケースや、建設業者が介護福祉事業に参入し、介護付き有料老人ホームの建設から運営までの事業展開を図ったケースがある。また、農家・食品製造業者・大学・病院等が連携し、災害時に食事制限者(腎不全・糖尿病・アレルギー疾患等)が、安心して食べられる非常食を開発し、今年度だけで東京都に三万食を販売したケースもある。

  経済産業省の「新経済成長戦略2008」においては、成長を実現するために「地域・中小企業・農林水産業・サービスの未来志向の活性化」を挙げ、「新たな健康サービスの創出」に向け力を入れることとしている。健康産業は不況に強い産業だと言われているが、地域における個々の企業規模は非常に小さい。そのため、地域や企業間の連携が必要である。「健康寿命」という強みを持つ山梨県にも、新たな健康サービスを生み出す力があるのではないか。「健康になるには山梨県へ」そんなブランドを持つ県になることを望む。

(山梨総合研究所 主任研究員 斉藤 七二)