『Yafo Mag』VOL.40「甲府発・地球シミュレータが122.4TFLOPSを達成」
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20090604/index.html
独立行政法人海洋研究開発機構(加藤康宏理事長、横浜市)は、6月4日、本年3月より運用を開始した「地球シミュレータ」で実施したLINPACKベンチマーク(注1)による性能測定において性能値122.4TFLOPS(注2)、実行効率(注3)93.38%の性能を達成したことを発表した。この性能値は日本1位、世界でも16位にランクインするが、理論ピーク性能に対する実行効率では世界1位となる。
この地球シミュレータは、甲府市大津町に本社を構えるNECコンピュータテクノ(NECT)が設計、製造したスーパーコンピュータ「SX-9/E」160ノードから構成される新システムである。つまり地球シミュレータのハードは「メードイン甲府」であり、同社の「スーパーコンピュータ」は世界1級の県産品の一つであることは、県民の誇りとして知っておいてよいことだと思う。
NECTは、1985(昭和60)年に「甲府日本電気」として設立され、山梨の地で事業を展開、拡大してきたが、2002(平成14年)に当時の茨城日本電気との再編により、NECのスーパーコンピュータ、汎用コンピュータなどハイエンド部門の唯一の生産会社として生まれ変わって現在に至る。甲府日本電気時代より20年以上にわたり、常に世界最先端・最速のスーパーコンピュータの開発競争に挑戦してきたことがNECTの誇りでもある。
海洋研究開発機構は、SX-9のCPUが稼動システムとして世界最高速となる1CPU性能(102.4GFLOPS)を有していることから、『今後も高い性能を持つ「地球シミュレータ」を活用して、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第5次報告書に向けたより正確な気候変動予測等の地球科学ならびに関連技術に貢献していく』と発表している。
IPCCは、地球温暖化問題への対応策を科学的に裏付ける組織として、国際的に大きな影響力を持ち、アル・ゴア元米副大統領とともに2007年ノーベル平和賞を受賞した。そのときの温室効果ガスのもたらす気候変動予測計算を担ったのが、日本の地球シミュレータであり、先代の「メードイン甲府・SX-6」である。
県産品が国連プロジェクトとして、地球大気・海洋の変動を定量的に評価・予測し、自然災害からの人類の生命・財産を守り、また、50年後、100年後の地球環境をシミュレートする活動に貢献していることは、地盤沈下を言われて久しい山梨県経済のなかで、なんとも頼もしい話題。私たちは、SX-9を通して、地域から地球の未来を見ることができるのである。
(主任研究員 井尻 俊之)
※「TOP500」の関連報道
注1 LINPACK(リンパック)ベンチマーク連立一次方程式解法プログラムLINPACKを用いた性能評価。スーパーコンピュータ性能比較プロジェクト「TOP500」で使われる。
注2 FLOPSは「Floating point number Operations Per Second」の略で1秒間に1回の計算ができる処理速度をあらわし、T(テラ)は1兆(10の12乗)を意味する。
注3 実行効率 LINPACKベンチマークで達成した性能(122.4TFLOPS)と理論ピーク性能(131.072TFLOPS)の比。