南アルプスで見つけた小さな芽
毎日新聞No.290 【平成21年6月26日発行】
今月初旬、南アルプス市の公園に、900人の踊り子が集まった。この踊り子は、県内からだけでなく、東京や静岡といった県外からも参加しており、総勢35チームに上る。公園内に設けられたステージでは、それぞれのチームが意匠を凝らした服装や音楽で「よさこい」を力強く、また時には、かわいらしく踊り、観客を楽しませた。
最後の演目「総踊り」では、すべてのチームが参加し、ステージ上だけでなく、公園自体もステージにしていた。多くの団体・踊り子の演舞であったため、非常に迫力があり、見るものに元気や活力を与えるものであった。また、この「総踊り」は、観客が楽しむだけなく、踊り子自身も楽しみながら、さらにスタッフも楽しみながら、一体感のある締めくくりとなった。
今回、南アルプスで行われたよさこい祭りは、2006年に「地域活性化」と「観光振興」を目的に、社団法人南アルプス青年会議所が企画・立案を行った祭りである。翌年には、この青年会議所が母体となり、実行委員会を設置し、市民主導の祭りとした。
現在は、「南アルプス市フルーツ山麓フェスティバル」(市の観光資源である「フルーツ」と「山岳」を県内外に発信し、ファンづくりを目指した観光イベント)のステージ部門として、開催されている。今年で4回目となるが、毎年多くの方が県内外から楽しみに来ている。
このような祭りを開催し、実行するためには、住民や各種団体の連携は欠かせない。「よさこい」というツールを用いて、地域連携を促す取り組みは、地域活性化のための重要な一歩といえる。また、今後の展望として、県外への祭りにも参加し、日本中のお祭りで南アルプスをPRしてくるという構想も模索している。
地域活性化のために、「よさこい」を活用する自治体は300を超えるという。有名なところでは、高知県の「よさこい祭り」や札幌市の「YOSAKOIソーラン祭り」がある。南アルプスの取り組みはまだまだ小さく、また若い、地域活性化の非常に小さな芽である。しかし、郷里で市民主導の活動が始まっていることを、非常に誇りに思う。
(山梨総合研究所 主任研究員 斉藤 七二)