一店逸品運動と地域活性化


毎日新聞No.292 【平成21年7月24日発行】

  一昔前の買物といえば、魚を買うなら鮮魚店へ、野菜なら八百屋へというように、近所の商店へ行くのが普通であった。しかし、最近では郊外型大型店など、一カ所で全ての買物が出来る店舗に車で出かけ、まとめ買いをすることが多くなっている。消費者のライフスタイルの変化により、地域の商店街の活気は急速に失われている。

  そんな中、県内の各地域において、商店街を元気にしようと一店逸品運動が盛んに行われている。この一店逸品運動は1993年に静岡の呉服町名店街で始まった。商店街の各店が互いに協力し、個性を生かした新商品・新サービスを提供することで商店街の活性化を図ることを目的とした運動である。ランドセルにも使われている防水牛革を使用した頑丈な鞄、製茶段階で出るお茶の粉を利用した100%天然素材の脱臭剤、サッカーボールを模したジュエリーなど、活動を通して個性的な商品を数多く輩出している。
  私の地元でも一店逸品運動が行われており各店が趣向をこらした商品やサービスを提供している。その一つに、地元の名所である櫛形山の形をしたアンパンがある。きっかけは、地域にちなんだものを作り、地元の活性化に一役買えればとの発想からだそうだ。地元でも話題の商品となっており、このような地域の特徴をいかした商品やサービスの提供は、商店と消費者を繋ぐ手段として期待されている。

  2020年の県内人口は約83万人に減少し、65歳以上の人口は約30%にのぼると予想される。高齢化社会はすぐそこまで来ている。郊外型大型店は消費者ニーズから県内でもその数を伸ばしているが、高齢者にとって快適とはいえない面も多い。生活の場に近い地域の商店街は、既存インフラの整備やコミュニティを充実させることで高齢者にも暮らしやすい社会の一助となりえる。そのためにも、地域の商店街の活性化が欠かせない。その解決策の一つとして、地域の実情に即した一店逸品運動を継続して展開してもらいたい。一過性の運動としてではなく、継続的に活動することで商店の魅力が消費者に伝わり、街のにぎわいや活気につながるのではないだろうか。

(山梨総合研究所 研究員 三枝 万也)