『Yafo Mag』VOL.42「18 ― 有権者・成人者年齢の18歳引き下げで、若者は幸せに なれるか ― 」


 総選挙は8月18日に公示、8月30日に投開票の日程で行われる。今回の総選挙は政権交代をかけた激戦となっているが、衆議院解散直後の7月29日、政府の法制審議会部会は選挙権年齢の18歳引き下げを前提に「民法の成人年齢を18歳に引き下げるのが適当」とする最終報告をまとめ、早ければ来年の通常国会に民法改正案を提出することになると発表した。
 これは平成19年5月に成立した、憲法改正のための国民投票法案が「18歳以上に投票権がある」と定めており、その付則に成人年齢の引き下げについて検討するよう促していたためである。有権者・成人年齢が18歳となることで、今後飲酒、喫煙などの是非論議も高まるだろう。
 その一方で8月上旬に「若者は選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる」という衝撃的なタイトルの本を早稲大学国際教養学部の森川友義教授が発表した。
 森川教授によると2年前の参議院選挙では20代の有権者約1500万人に対し投票約500万人。70代では約1200万人に対し約900万人。20代の若者の3分の2が棄権し、高齢者はしっかり投票していることにより、政治家は高齢者福祉を最優先し、若者のための政策をないがしろにしてきたという。
 「世代会計」方法で計算すると、今後予定されている年金の支給年齢や医療保険の自己負担率引き上げなどで、現在の70代の人たちと比べると、若い世代は生涯で4000万円も損をすることになるという。しかも赤字国債の乱発で国の借金(公債)は一般会計税収の13年分という破綻寸前の状況。そのツケは今の若い世代に回され、高齢者になるときには現在の福祉水準が維持されるのは困難になっている。若者が自分たちの政治無関心がもたらしたものに気がつくには遅すぎるかもしれない。しかし有権者・成人年齢の18歳引き下げは、その最後の機会となるようにしたいものだ。

(主任研究員 井尻 俊之)