民主党政権の農政に注目


毎日新聞No.295 【平成21年9月4日発行】

  民主党が300議席以上を獲得して歴史的圧勝に終わった衆議院総選挙から1週間が経とうとしている。今までとは違う政治が行われ、経済、年金、医療など多くの問題を抱える世の中が変革されるという国民の期待感は強い。今後、民主党が選挙公約で掲げた各種政策が実施されていくだろう。

  その中で、山梨県の将来図を考えた場合、特に注視したいのが農業政策である。山梨県の農業部門は、県内総生産額に占める割合こそ低いものの、桃やブドウなどの果樹栽培を通して山梨県のイメージ形成を担い、それが観光産業などと結びつき、県内経済に大きな影響を与えている。また単なる経済的効果に限らず、収穫期を迎えたブドウ棚に色鮮やかなブドウが実るさまは、山梨を訪れた観光客に感動と癒しを与えていることだろう。しかし、県内農業は耕作放棄地率の高さ、農業従事者の高齢化、後継者不足など、日本の農業問題が凝縮されているような状況である。今こそ対策を講じなければ、数年先には美しく広がるブドウ棚に雑草が生い茂るような状況になりかねない。
  民主党の選挙公約では、農業分野に関して、農家への戸別所得補償制度等が書かれている。今後、より具体策が明らかになるであろうが、農業政策こそ問題の解決に特効薬など存在しない。中・長期的な期間を念頭に置き、問題解決にむけ具体的な道筋を盛り込んだ各種政策の展開が必要である。目先の利益にとらわれることなく、まずは地域の実情、地域の特性にあった具体策を練る必要がある。その上で日本国内全体としての政策や、日本と世界全体との関係を考慮に入れた農業政策を実行しなければならない。政権が変わればすぐに政策が転換される事態だけはあってはならない。政権が変わろうとも受け継がれるような農業政策の展開が必要である。

  今回の衆議院総選挙では、今まで積み上げて来た歴史が、一瞬のうちに崩れ去る現状を目の当たりにした。新たな何かを国民の多くが期待している。変革が必要と言われて久しい農業政策。どのような道筋が出てくるのか、大きな期待を抱きながら民主党の農業政策に注目していきたい。

(山梨総合研究所 研究員 古屋 亮)