温暖化対策と地域戦略


毎日新聞No.296 【平成21年9月18日発行】

  鳩山由紀夫首相が掲げた温室効果ガス削減の中期目標を巡って、賛否様々な意見が駆け巡っている。2020年の削減目標は90年比で25%と、麻生政権の3倍程の削減目標である。麻生政権の「90年比8%」の削減は国内での削減に限られるのに対し、民主党の25%の削減は途上国との排出権取引などが含まれている。また、鳩山首相は全ての主要国の参加と合意が、この削減目標の前提であるとし、米国、中国、インドなど主要排出国の参加を条件としている。
  一昨年の洞爺湖サミットでは、「環境・気候変動」に関する主要8カ国の首脳声明で「2050年までに世界の排出量の少なくとも50%の削減を達成する目標というビジョンを共有する」との長期目標を想定した。2020年までの25%削減は長期目標の半分だとすれば、さほど驚くべき数値ではない。

  民主党はEU諸国で実行されているような国内の排出量の上限(キャップ)を設定し、排出量取引制度を導入すること、ソーラー等による発電については全量の固定買取制度を導入すること、1次エネルギー供給量の10%を再生可能エネルギーとすることなどを考えている。また、この対策のためにエネルギー諸税を整理し、地球温暖化対策税とする。
  08年10月に導入された国内排出量取引制度(試行)は、大企業が中小企業に技術・資金を提供し、排出削減の共同事業を行う。この事業による削減量を認証することにより、大企業が温暖化対策に充当できるという仕組みである。また、森林整備やバイオマス燃料利用による排出削減事業を企業が温暖化対策に利用できる仕組みも考えられよう。この自主的な国内制度が、国際的な枠組みである京都議定書の目的と整合する手段であるかどうかについては検討の余地があるが、中小企業の省エネ化、省エネ産業の育成、地域振興に寄与することと思われる。

  温室効果ガス削減の中長期目標を達成するためには、国内排出量取引制度が重要な手段の一つになろう。地方においては、地球温暖化対策の推進とともに環境産業を育成する視点から、これらの制度を活用した地域戦略を構築していくことが求められる。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)