『Yafo Mag』VOL.44「返済猶予最長3年」
世間を賑わせている「モラトリアム法案」(借入金について返済猶予を認めるもの)について、今月9日に原案がまとめられた。法案は昨年秋の金融危機以降、低迷する国内経済において、特に資金繰りが厳しい中小・零細企業を救済するためのものであり、「返済猶予の期間は最長3年、対象は元本に加え、希望する場合は金利も含める。返済猶予の義務付けは行わず、借り手企業と金融機関の合意の元で行う。
損失は信用保証制度を活用して穴埋めし、事実上の政府保証を付ける。猶予した融資先は不良債権に分類しなくても良い」という内容である。また、企業だけでなく住宅ローンの借り入れがある個人も対象とされる見通しである。
受注減に伴う収入減により資金繰りに苦しむ企業にとっては、制度の法案化は望まれるところであろう。しかし、この政府保証の原資となっているのは私たちの税金であり、制度を利用した企業が倒産・破綻した場合は、税金が投入される。
重要なのは対象となる企業の見極めである。「業績の回復が将来見込める企業を対象とする」としているが、その判断は難しい。制度活用の義務付けはないものの、金融機関側としては法案に沿った柔軟な対応が求められる。また、企業側にしても、安易にこの制度を活用しようとすれば、経営努力の意欲が失われかねない。
最終的な詳細決定はこれからであるが、この法案が中小・零細企業を救う手立てとなるのか否か、制度の運用がその鍵を握っているのではないか。
(研究員 小柳 哲史)