ベトナムで見た笑顔


毎日新聞No.299 【平成21年10月30日発行】

  先月、ベトナム社会主義共和国へ視察に行く機会に恵まれた。通称ベトナムといわれるこの国は、インドシナ半島の東側に位置し、南北に長いスリムなS字形をしている。1975年にベトナム戦争が終結し、翌年南北が統一。この頃から、人口が爆発的に増えたため、現在、若者が非常に多い国だ。

  ベトナム南部にある第1の都市ホーチミンを訪れた。ここでは、まず走行するバイクの量に誰もが驚く。通勤時間帯だけではなく、夜も道路にはバイクがはんらんしている。信号が変わると同時に、津波のようにバイクが押し寄せてくる光景は圧巻である。乗車人数も、2人乗りは当たり前。父親が運転し、母親がその後ろに座り、その間に、子どもが乗る。さらには、父親とハンドルの間にさらに一人乗るケースもある。
  ベトナム最後の王朝があった中部の町フエにも訪れた。ホーチミンほど近代化は進んでいないが、雑居ビルが多く、その1階には、飲食店や雑貨屋などの商店が並んでいる。活気に満ちあふれるこの光景を目にした視察参加者は、「我々が生きた高度成長期を思い出す」と口々にしていた。
  また、フエからラオス人民民主共和国に向かう途中で、少数部族が実際に居住している高床式住居を何軒も見ることができる。2020年には、人口が1億人になるといわれている発展目覚ましいベトナムに、このような住居がまだ残っていた。ベトナムにもかなりの格差があるようだ。

  衛生面や経済面等で、まだまだ不安の残るベトナムであるが、私には一つ印象的な光景があった。それは子供たちの笑顔である。少数部族の地域では、川で遊ぶ子供たちや、地域内を走り回る子供たちがいた。20人近くの子供たちが、10歳くらい、5歳くらいの子が入り交じって、笑顔を振りまきながら、遊んでいる。我が愛娘もあれほどの笑顔で、たくさんの子供たちと無邪気に遊んでいるだろうか。
  最近の若者は消費をしない、海外旅行にも興味がないと聞く。今夏、総研へ就労体験に来た学生にも聞いてみたが、卒業旅行に行く予定がないという。海外に出ることは、日本や山梨の現状や将来を知る良い機会である。ぜひとも、海外にも目を向けて欲しい。

(山梨総合研究所 主任研究員 斉藤 七二)