新成人にむけて


毎日新聞No.304 【平成22年1月8日発行】

  まもなく成人式を迎える。今年度、本県の新成人は9,991人である。新成人が生まれた1989~1990年は、東西ドイツの統合やバブル経済の崩壊などがあり、先行きの不透明感が盛んに報じられていた。それから20年が経過したが、BRICsの台頭や、一昨年来から続くアメリカ住宅バブルに端を発する不況が日本経済にまで波及し、20年前よりも先行きの不透明感は増している印象がある。
  こうした中で成人式を迎える若者に、この先の生活に希望や目標を持って進んでいこうと言うのは酷な気もする。しかし、今の本県には、若者の力が必要である。

  本県は、総人口が90万人にも満たない小さな県である。しかし、政財界をはじめとして、文学、芸能、スポーツ界などの幅広い分野において、全国的にも、また世界的にも著名な人材を多く輩出している。人材宝庫・人材育成の県と言っても過言ではない。しかし、なぜか、これら著名人は、東京、大阪、福岡などの大都市圏出身者とは異なり、本県出身ということを積極的に発言しない。そうした中、昨年、サッカー元日本代表の中田英寿氏が本県出身ということを積極的に発言し、本県で試合を行った。また、大晦日のNHK紅白歌合戦において、人気歌手グループ「レミオロメン」が山梨県を愛しているという言葉を発している。地域を愛する気持ちが伝わってくる。これらの行為、言葉が地域に与える活力、影響力は計りしれない。当たり前だろうが、自分の生まれた故郷を愛せずして、その地域のことを積極的に考えていくことなどできない。

  今後、ますます混とんとするだろう社会・経済状況の中では、安定的な維持・発展のための特効薬などは存在しない。地域が持つ力を最大限に生かし進んでいくしか方法はない。本県には豊富な人材を育成したり、輩出する力がある。それを中心的に担っていくのが、今年、成人式を迎える9,991人をはじめとする若者なのである。是非、新成人には、山梨県を愛する気持ちを強く持ち、今後の社会・経済を自分達が担うという気概を持って進んでもらいたい。

(山梨総合研究所 研究員 古屋 亮)