新成長戦略と建設業
毎日新聞No.305 【平成22年1月22日発行】
昨年12月30日に、新成長戦略の基本方針が閣議決定された。基本方針には強みを生かす成長分野(環境・エネルギー、健康)、開拓によって成長が期待できる分野(アジア地域でのビジネス展開、観光立国と地域活性化、)成長を支える分野(科学・技術、雇用)の戦略分野の目標・施策が示されている。政府はこの基本方針に検討を加え、2010年6月をめどに実行計画(工程表)を含む「新成長戦略」を取りまとめる予定である。
環境・エネルギー分野では、20年までに50兆円の新規市場、140万人の新規雇用、日本の技術で世界の温室効果ガスの13億トン削減(日本の年間排出量相当)を目指す。主な施策は電力の固定価格買取制度の拡充などによる再生可能エネルギーの普及。エコ住宅、ヒートポンプの普及による住宅・オフィスのゼロエミッション化、エコカーの普及等である。
家庭部門、オフィス部門の二酸化炭素(CO2)排出量は対90年比で07年では42%、44%と大幅に上昇しており、住宅・事業所の大幅な省エネ化やエネルギー効率的な都市環境の形成が課題である。
エコ住宅やグリーン・ビルディングの新築については、大手ハウジングメーカーやゼネコンが商品開発、技術開発を行っており、地域の中小企業の参入は難しい。一方、住宅や建物の省エネ型リフォームは今後の有望な市場であるが、新たな技術開発や技能研修を通じた技術の普及が必要である。欧州各地では、技術開発・教育の役割を担う機関を設立し、既存住宅・建築のエネルギー効率化を推進している。研修機関はNGO、第3セクターなどが運営しているが、興味深いことは、新たな技術開発や研修のための素材として公共施設のリフォームを活用し、再生した施設を研修施設として利用していることである。
建設業は地域経済や雇用に占める割合が高い。山梨県の建設業は就業者数の9.3%、県内総生産のシェアは7.5%と全国平均を上回る(05年)。公共工事が減少する中、地域経済や雇用にとって、持続可能な建設業への転換が不可欠である。山梨県の環境・エネルギー戦略の一つとして、建設分野の技術開発や技術研修の取り組みが求められる。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)