自治体アンテナショップ


毎日新聞No.309 【平成22年3月19日発行】

  自治体アンテナショップという言葉を聞いたことがあるだろうか。各県などの自治体が主に首都圏において特産品の販売や観光情報を提供する施設である。地域情報の発信拠点といえる。消費者にとっては、東京など都市部に居ながらにして、全国各地の特産品や観光情報が手に入るメリットは大きい。自治体にとっても、地域のブランド力アップに少なからず貢献していると思われる。アンテナショップといってもその形態はさまざまで、特産品などの販売、飲食の提供、観光や移住の情報提供、またその複合型などがある。(財)地域活性化センターの調べによると、東京都内だけでも約40店舗(H21.9現在)に上る。

  さて、順風満帆に見えるアンテナショップも十分な集客力があるかというと、私が見るかぎり、そうともいえない。集客力の差は歴然である。当然、知名度の高い自治体や立地条件が良いアンテナショップが有利であることは論をまたない。また、特産品の販売だけではなく、食事などができる複数の機能を併せ持ったアンテナショップがより高い集客力を期待できるのも確かである。
  だが、それだけではない。集客力を左右する重要なポイントは、消費者に対して、地域性のある差別化された商品(情報)を提供できるかという点にあると思う。残念なことに、同じような顔をもったアンテナショップがあることも否めない。
  では、一線を画した魅力ある商品を開発し、消費者に提供していくためには、どのような役割を果たせばよいのだろうか。これまでは、土産物を扱う小売店の域を出ないアンテナショップも見受けられた。今後は、地域産品などの開発に生かせる消費者の「声」を的確にとらえ、地域にフィードバックする本来のマーケティング機能を発揮することが求められる。

  数あるアンテナショップの中でも、消費者が本当に必要としているサービスや情報などを提供できる感度の高いアンテナショップが生き残るのであろう。読者のみなさまも、このような視点から、アンテナショップを訪れてみてはいかがであろうか。

(山梨総合研究所 主任研究員 村松 公司)