合併後の地域づくり
毎日新聞No.310 【平成22年4月2日発行】
3月8日、増穂町と鰍沢町が合併し富士川町となった。03年3月の南部町を皮切りに県内各地で市町村の合併が進み、03年1月の64市町村から現在の27市町村へと、山梨県の市町村の数は半分以下となった。
平成の大合併は市町村の行財政基盤を強化することを目的に全国で推進されたもので、県内の自治体も合併により少子化・子育て支援対策や高齢者福祉を専門とする部署などが設置され住民サービスの向上につながったといえる。また、合併により首長等が減ったことによる人件費の削減効果も大きい。しかし、これは行政の立場からの意見であり、住民からは「規模が大きくなったことで住民の声が届きにくくなった」、「合併前に行われていた行事等が無くなった」、「支所の職員や機能が減った」などの意見を聞くことが多く、市街地や本庁を持つ中心部と周辺部との格差や行事などの減少による住民の地域への参加意識の低下が課題となっている。
そんな中、全国でも合併した自治体では行政に地域の声を上げるため、地域審議会の設置や、自治会や住民、NPOとの協働のまちづくりといった取り組みが進んでいる。行政は規模の拡大により自治体全域への画一的なサービスが地域の実情に合わないこと、また財政的な問題からこれまでのような行政主導型のまちづくりが困難なことを背景に、地域住民の積極的なまちづくりへの参加を呼びかけている。他方、住民は行政に対し地域の声を聞き、地域の実情にあったサービスや施策の展開を求めている。
このような課題を解消するためには、住民主導型の地域づくりが重要な要因となる。なにより、地方自治の主役は地域の住民である。地域の伝統芸能や行祭事、防災活動などこれまでのように行政主導では維持発展が困難な問題の解決には、地域の力が欠かせない。魅力的な地域づくりは、住民一人一人の積極的な地域への参加、行政や地域への提案、そして地域力の向上が必要である。合併により行政との距離を遠いと感じる今こそ、住民の地域活動への積極的な参加、地域力のアップが求められている。
(山梨総合研究所 研究員 三枝 万也)