自転車にやさしいまちづくり


毎日新聞No.311 【平成22年4月16日発行】

  最近、自転車通勤を始めた。学生時代以来、久しぶりに自転車に乗ったのだが、これがなかなか重宝である。ちょっとの距離であれば、車より自転車のほうが便利であり、遠い場所に行く場合も、健康のためということもあるが、自転車を利用している。周りの景色や街並みを眺め、また季節の移り変わりを感じながらさっそうと走るのは気分がよいものだ。

  自転車を利用して思うのは、「どこを走ればいいのか」ということである。自転車は「軽車両」であり、原則車道の左端を走行しなければならないが、自転車道の整備がなされていないため、非常に走りづらい。特に狭い道では車に追い越される度に、ぶつかるのではないかと不安になる。そのためだろうか、歩道を走行している自転車も多く見かける。確かに例外的に認められている場合もあるが、歩行者の通行の妨げとなるし、実際、自転車が加害者となる事故も増えている。
  08年1月に、自転車通行環境整備モデル地区として甲府駅周辺の2カ所が認定された。これを受けて、今年3月に国道では県内初となる自転車専用道路が平和通沿いに完成した。約500mの区間であるが、歩道を区切って自転車道が整備され、自転車利用者が車や歩行者と接触する危険性は回避されている。
  このような試みは歓迎すべきであり、県内各地に広げて欲しいが問題もある。自転車道を作れるほど幅員の広い歩道自体が少ないということだ。だとすれば、車道を削って自転車道を整備するという方法を考えても良いのではないか。

  環境や健康に対する意識が高まる中で、世界的にも自転車は大ブームである。また、交通事故の防止、渋滞抑制、街の活性化という観点から、オランダやドイツなど欧州では、自転車を中心にまちづくりを進めているところも多い。日本でも、自転車中心のまちづくりに対する機運が高まりつつある。そのためには、自転車利用者のルール・マナーの問題、自動車運転者の意識の向上、自転車道・駐輪場の整備などの課題も多い。しかし、過度の車依存社会からの脱却を図るためにも、交通手段としての自転車の役割を見直し、自転車にやさしいまちづくりを考える、パラダイムシフトの時期に来ているのではないか。

(山梨総合研究所 主任研究員 小柳 哲史)