アイオワ・山梨 50年


毎日新聞No.312 【平成22年4月30日発行】

  本県が米国アイオワ州と姉妹州県を結び今年で50年になる。州県間の姉妹関係としては我が国で最も古い。そして最も成功している姉妹交流の一つでもある。交流が長期にわたって多方面で展開され、行政だけでなく、多くの市民が参加し、重層的に発展してきたのが、成功の要因だ。
  友好関係は、本県の台風災害に対して、アイオワ州から見舞いとして農産物が送られたことに端を発する。以来、さまざまなかたちで人々が太平洋を渡ることになる。交換留学生として、駐在員として、農業の実習生として、あるいは、スポーツの親善交流チームとして。

  しかし、今、課題がないわけではない。共通のメリットを見いだしにくい行政の交流には限界がある。アイオワ側の交流主体は、600人を超えるボランティアに支えられた民間団体だが、本県にはそのような組織は育ってこなかった。また、アイオワでも山梨でも、活動を主導するメンバーは、固定化・高齢化している。
  50周年の記念式典で来県した元アイオワ州知事のビルサック米農務長官は、「交流の輪がこれからも50年続くことを願っている」と述べた。それが温い人の輪として続いていくか、名ばかりのものに収縮するか、そのカギになるのは子供たちへの伝承であると思う。
  私は02年から2年間のアイオワ州滞在中、本県の生徒・児童がアイオワ州の同世代の仲間と接するのを見てきた。その時の子供たちの生き生きとした笑顔や、驚きに満ちた表情が忘れられない。
  もっと多くの子供たちに異文化を肌で体験してもらいたい。数百、数千の人々が携わってきた交流の歴史を知ってもらいたい。彼らがやがて二つの地域を結ぶと同時に、真に外に開かれた地域づくりの担い手になっていくことと思う。

  50周年の記念として、交流の歴史を記した絵本がアイオワ州から本県に寄贈された。県内の小学校で朗読会も開催されたという。美しいイラストにあふれた本である。子供たちが、遠く離れた地に思いをはせ、興味を持ってくれるとよい。
  絵本の表紙には、日本語の副題で「海の向こうの特別な友だち」とある。アイオワは本県にとって特別な友だちなのである。友だちの手は離さぬよう、しっかり握っていたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 依田 真司)