広い視点からの地域活性化
毎日新聞No.316 【平成22年6月25日発行】
先日、福岡市で開催された地方シンクタンク協議会のフォーラムに参加した。テーマは、「グローバリゼーションと地域活性化」である。グローバリゼーションの定義を簡略化して考えると人・モノ・金・情報が地球規模で流動化することであり、文化の均質化が進むことである。そして、肯定的な面と否定的な面とが存在する。肯定的な面からは、国境を越えた経済活動があり、その延長線上に地域の活性化が考えられる。つまり経済活動において両者は、補完性や相乗効果を持つものであるといえる。
さて福岡市は、1987年に策定した基本構想の中で「活力のあるアジアの拠点都市」を謳っている。そして、具体的な施策として、福岡と釜山を中核とする超広域経済圏を築き上げようとしているのである。両地域は歴史的にも地理的にも近接性があり、近年では九州入国外国人のうち、約70%が韓国人であり、この数は全国を訪れの韓国人の30%にも及ぶそうだ。このように人が動けば、モノ・金・情報や文化までも動く。こうした超広域経済圏が成立しうるのも、両地域を高速艇や飛行機という交通インフラが整備されているからであるが、それ以上に重要なことは、両地域の市民が近くて遠い関係から、近くて近い関係を築き上げようとする意思があることである。
次に対馬の例である。対馬では、約3万5000人の島民に対し、年間7万5000人の韓国人が訪れるそうである。島民の2倍に及ぶ韓国人が訪れることによりさまざまな問題が発生している。しかし低迷する離島の活性化のために地域振興として全島を挙げて韓国人受け入れ態勢の整備や住民が参加した「体験・交流型」の観光に取り組んでいる。ここにも島民の強い意思を感じる。効果を見ると、08年長崎県が出した推計値では、経済波及効果は21億6000万円であった。まさにグローバリゼーションと地域活性化が上手くかみ合った結果であろう。
内陸に位置する山梨県では、こうした超広域経済圏という発想はなかなか出にくい。しかし、グローバリゼーションが歴史の必然であるならば、我々はもはや県境や国境をあまり意識せずに地域活性化や地域政策を考える時期に来ているのではないだろうか。
(山梨総合研究所 専務理事 福田 加男)