VOL.2「リチウム確認可採掘埋蔵量410万トン」


 米国地質調査研究所のデータによると、世界のリチウム確認可採掘埋蔵量は、410万トンにのぼる。
 現在、世界各国で次世代自動車の開発競争が激化しており、電気自動車、エコカーといった話題を頻繁に耳にする。リチウムは電気自動車、パソコン、携帯電話など様々な家電にも使用されており、今後の需要増が見込まれている。既に、南米、中国といったリチウム産地では、争奪戦が激化している。
 『マグネシウム文明論(矢部孝・山路達也著)』では、EVの可能性について、「現在、世界には9億台以上の自動車が走っているので、すべてにリチウムイオン電池を搭載すると、必要なリチウムは780万トンになります。しかし、リチウムの確認埋蔵量は1100万トン(確認可採掘埋蔵量は410万トン)で、自動車への利用だけを考えても十分とはいえません。現在、リチウム鉱石の年間生産量は2.5万トンですが、今後、需要は急増すると見られており、リチウムイオン電池が普及すれば、リチウムは間違いなく石油以上の制約資源となるでしょう(P159)」と分析している。
 こうした現状を踏まえ、同書では「マグネシウム」に着目し、海水からマグネシウム化合物を取りだし、太陽光励起レーザーで金属マグネシウムに製錬、製錬した金属マグネシウムを、自動車用の金属燃料電池や発電所の燃料として利用、更に利用によって生じる酸化マグネシウムを太陽光励起レーザーで再度金属マグネシウムに還元するという、壮大な、「マグネシウム循環社会」を提唱している。
 海水に無尽蔵に含まれるマグネシウム化合物を取り出し、それをレーザーで製錬し、金属マグネシウムを工場や家庭、交通機関の燃料として利用していく。マグネシウムには、従来の石油社会の考え方を根底から覆す可能性があるかもしれない。

(主任研究員 矢野 貴士)