ヴァンフォーレのように戦おう


毎日新聞No.322 【平成22年9月17日発行】

  サッカーJ2のヴァンフォーレ甲府(VF甲府)が、第25節を終了して第2位と好位置につけている。チームとしてのコンセプトが明確で、まとまっていることが好調の要因ではないだろうか。一方では、スタープレーヤーを集めながらチームとしての方向性がなく、下位に低迷しているチームもある。VF甲府の活躍を参考に、県内の産業界も同様な取り組みができないであろうか。

  VF甲府は、大企業からの豊富な資金援助があるわけでもなく、選手層も決して厚くない。限られた資源の中で、チームとしての強みを生かすべく守備の意識を高くし、攻撃時はエースFWを中心に個々の選手が役割を果たしている。それを多くのサポーターの声援が後押しをし、持てる力を発揮している。本県の産業界も同様ではなかろうか。本県には豊富な資金力があるわけではないので、資金面の支援は限られている。しかし、電子・電気・機械をはじめとする製造業というエースFWがいて、観光、農業、宝飾業などの個性あふれる選手がそろい、富士山や水などの豊富な自然環境がそれを後押ししている。これら本県が有する資源を活用し、最大限の力を発揮する体制さえ整えば、世界を相手に、また他都道府県を相手に戦える戦力を有している。

  現在、本県では産業振興ビジョンの策定が進んでいる。そこでは、本県の持つ資源の再確認、産業界が持つ強み、弱み、各産業界関係者の今後への認識などを参考に、本県産業界が目指すべき方向性について議論が進んでいる。そこで導き出される答えは万全ではないかもしれない。また産業界はサッカーとは異なり、途中で進むべき方向性を変えることは容易ではない。サッカーの戦いと、産業界の戦いを同列に並べるのは安易な発想かもしれない。しかし、他県と比較しても、本県が潜在的な力を持ち合わせていることについては、異論はなかろう。
  本県を支える各産業界の名選手達が、共通の方向性のもとに団結し、持てる力を発揮すれば、世界や他都道府県を相手に互角以上の戦いができると確信している。

(山梨総合研究所 主任研究員  古屋 亮)