甲府を涼しいまちに


毎日新聞No.323 【平成22年10月1日発行】

  夏の暑さは耐えがたいものになっている。今年の6月1日から9月27日までの間、最高気温35度以上の猛暑日日数は甲府市が34日で、猛暑ランキングは14位である。ちなみに、館林(群馬県)、熊谷(埼玉県)が41日、多治見(岐阜県)が38日、練馬(東京都)などが37日と連日ニュースになった都市がランキング上位を占めている。

  夏場のヒートアイランド対策と地球温暖化対策を達成するためには、省エネを進めるとともに、都市・施設の緑化や涼しいオープンスペースの創造が課題となる。夏の暑さ対策や大気汚染対策がいわゆる「風の道計画」、「風を意識した計画」で、80年以降、ドイツの内陸部に位置するシュツットガルト、フライブルクなどで取り組みが行われている。これは、風向・風速の調査をもとに、風を市街地に導くように緑地づくりや建物配置、高さなどをコントロールする都市計画である。00年以降、東京都をはじめ、都市計画マスタープラン等に「風の道」を主要施策として取り入れている自治体も増加している。  
  03年の東京都のヒートアイランド対策方針によれば、汐留、丸の内、西新宿、麹町の4つのモデル地区を選び、涼しい道の創造(保水性舗装、街路樹)、公園の創出、河川・運河の緑化、公共施設の緑化、個別施設の省エネ化などの総合的対策を実施しながら、企業と連携して環境技術を開発する。都市スケールでは緑地、水面の拡大に長期的に取り組んでいくこととしている。都心商業空間では、顧客確保のために、快適な涼しい道や屋外環境づくりが課題である。周知のように丸の内仲通りは、車道を狭め、歩道の拡幅や街路樹を整備している。

  甲府は周囲を山に囲まれてはいるが、中心市街地には駅前の平和通りをのぞくと並木はなく、公園・緑地は多いといえず、夏には歩行することも大変である。近年、市内に整備されている自転車道や公共施設・用地を中心に植栽、緑化を進めることが期待される。また、笛吹川、荒川などの河岸の緑陰は少なく、夏場の利用時間は限られる。河岸周辺の緑化を極力進めることによって、河川環境がレジャー・レクリェーション空間やクールスポットの表舞台になる可能性がある。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)