企業の評価


毎日新聞No.325 【平成22年10月29日発行】

  社会規範やマナー違反があとを絶たない。これは個人のマナー違反もさることながら、企業体による違反の多さにも驚かされる。「企業は社会の公器」と言われながら、近年、企業による不祥事が増加している。
  図書館の書棚には、「企業不祥事事典」なる本が所蔵されていた。手に取り目を通してみると1945年から07年1月までの間に起きた贈収賄・架空取引・不正経理処理など企業の不祥事件150件を収録している。この事典は新聞やテレビ、雑誌などで取り上げられ話題となった不祥事件を整理したものである。したがって、こうして表面化する事件は氷山の一角に過ぎないであろう。不祥事の原因はさまざまである。著者によると経営者が関与した事件が46件。従業員関与が65件となっている。経営者、従業員の倫理観・道徳観・価値観など、人心の荒廃によるものが約74%にも及んでいることが分かる。
  企業は、経済活動をしている「経済主体」であり、税金を支払う「担税主体」、就職先としての「雇用主体」である。これらは経済的視点から見た企業のイメージである。しかし、時代は企業に対し、経済的視点に加えて社会的視点、つまり企業の「社会的責任」を求めている。

  今年2月、県内企業100社に対し行った調査(回収率39%)によると、企業の社会的責任について7項目の中から三つ選択してもらったところ、「法令の遵守」が91.7%、「起業価値の向上」52.8%、「地域における雇用の創出」44.4%、「労働者の人権尊重」33.3%、「企業経営の透明性の確保」30.6%、「企業としての説明責任」25%、「株主利益の最大化」13.9%という結果であった。多くの経営者が企業活動に対し収益一辺倒から、社会への貢献や従業員の尊重へとシフトし始めていることが分かる。この結果は、企業不祥事件が増える傾向にある中で、少し気持ちを明るくさせてくれる。

  企業活動の幅は広がりを見せ、自己中心的な収益だけでは社会での存在意義は認められない。文化、教育、福祉、環境などの分野における積極的な活動や、それらいろいろな分野において企業の経営資源を活用した価値を創り出すことが求められている。

(山梨総合研究所 専務理事 福田 加男)