住民の力で商店街を守ろう


毎日新聞No.326 【平成22年11月12日発行】

  ある地域を訪れた時のこと、駅に隣接した大型スーパーが閉店していた。県庁所在地で立地条件がよい大手スーパーがなぜ撤退するのであろうか。 
  これまでは、大型スーパーなどが地域進出し、地元の小さな商店街が寂れていくという構図であった。しかし最近では新規のショッピングセンターが、既存のスーパーやショッピングセンターを駆逐するという現象が見られる。この結果、昔ながらの地元商店街が廃れ、さらに近隣のスーパーなども相次いで撤退することになり、商業施設の空白地域が生じてしまう。

  「商店街活性化」が言われて久しいが、関係者だけの問題ではなくなっている。地元商店街も廃れ、スーパーも撤退してしまうと、私たちは買い物のために、遠方の地域まで足を運ばなければならない。それでも自動車を運転出来ればよいが、運転免許証を持たない高齢者の方などは日常の買い物すら困難になってしまう。
  現実に、経済産業省の推計によると、商店街の衰退などによって食料品などの買い物が難しくなっている人たちが、全国で600万人程度いるという。私たちが当たり前にしていた日常の買い物に支障を来す事態が、現実に起こりつつある。
  では、どう対応すればよいのだろうか。現在、国で検討しているのが宅配サービスや移動販売などである。だが、これまでにも行政主導で様々な事業を展開してきたが、行政の支援や施策だけでは限界があるように思われる。

  商店街の生き残りは、もはや対岸の火事ではない。私たちの日常生活を守るという観点から、地元商店街を再生させるために、何が出来るかを私たち地域住民も考えていく必要がある。具体的には再生に向け、全力で取り組んでいる地元商店街を積極的に利用するということに尽きるのではないか。地域住民で商店街を支えることにより、昔の賑わいを取り戻せるはずである。
  高齢化が一層進む中、徒歩や公共交通機関を利用し、買い物が出来る環境を今真剣に考えていかなければ、買い物が困難となる「買い物弱者」がさらに増えてしまうであろう。

(山梨総合研究所 主任研究員 村松 公司)