ロボットが活躍する社会


毎日新聞No.328 【平成22年12月10日発行】

  ロボットといえば「鉄腕アトム」や「機動戦士ガンダム」など空想の世界での活躍をイメージするのではないだろうか。空想上のロボットと現実のロボットとが混同されがちだが、私たちの周りでは既に数多くのロボットが活躍している。CMにも登場した「ASIMO(アシモ)」などが有名だ。また、最も活躍しているのは製造現場で組み立てや加工を行う産業用ロボットである。

  人口減少社会を迎えた近年では、私たちの普段の生活に密着したロボットが注目され、研究・開発が活発になっている。今年開催された上海万博でも「暮らしを豊かにするロボットたち」と題し、人の動作を補助するロボットスーツや、自律移動するオフィスビル清掃ロボットなどが出展され話題となった。
  20年後、日本の人口は1000万人減少し、65歳以上の高齢者人口は現在の20%台から30%台に達するといわれている。1人暮らし高齢者の増加、介護をする家族も高齢者となる老老介護の問題、労働人口の減少による農林水産業や製造業の従事者不足など、これまでのような経済活動や生活が困難になると予想される。しかし、ロボットのサポートで階段の上り下りや食事が出来れば、介護をする家族の負担は軽減される。ロボットスーツを着用すれば、自分で買物や通院も可能になり通常の生活が可能だ。工場だけでなく、例えば水田では田おこしや代かき、収穫など人の代替を行うロボットやロボットスーツにより負担を軽減すれば、高齢になっても農業などの継続が可能となる。安全性や価格、性能面で現時点では課題が多いものの、生活支援ロボットへの潜在的ニーズは今後益々大きくなっていく。

  100年以上前、自動車が開発された当時は、現在のように普及するとは思っていなかったはずである。また15年ほど前まではパソコンや携帯電話も今のように誰もが持っているものでは無かった。20年後に鉄腕アトムが登場するのは難しいかもしれない。しかし、自動車やパソコンと同じように、ロボットが私達の生活の一部となっている可能性は非常に高い。人口減少社会を迎え、生活支援ロボットの活躍が期待されている。

(山梨総合研究所 研究員 三枝 万也)