「就活」に負けるな


毎日新聞No.329 【平成23年1月7日発行】

  文部科学省、厚生労働省が発表した今春卒業予定の大学生の就職内定率(昨年10月1日時点)は57.6%と、調査開始以降、過去最低となった。県内大学生の就職内定率も38%と低水準であり、「新就職氷河期」の時代を迎えていると言えよう。

  その要因は、雇用の需給バランスが大きく崩れていることである。前回の就職氷河期(00年前後)同様、業績の悪化した企業は新卒採用の抑制を進め、非正規社員を増加するなど採用の複線化を図っている。一方で、大学進学率は50%を超え、新卒の求人者数に対して大学生の数自体が供給過多になってきている。
  また、景気低迷時の人員削減やグローバル化に伴う業務量の拡大などにより、一人あたりの労働量は増加しており、企業に人材育成を行う余裕がないという現状もある。そのため企業側は、課題解決能力やリーダーシップ、創造性などを備えた即戦力となる人材を期待しているが、大学全入時代になり、学生たちの基礎学力が低下しているため、企業の求める人材像と実際の学生の質の間に大きなギャップが存在している。
  「就活」についても、その早期化・長期化による弊害が懸念されている。企業の中には効率的な採用活動を進めるため、一部の有名大学からの採用を前提としているところもあるという。いわゆる就活格差、学歴格差が生じているのである。学生の側も、内定を取ることが大学生活の一番の目的となり、学業を後回しにするなど、「就活」自体が目的化している傾向がある。

  全体的に雇用情勢は厳しく、そのしわ寄せが新卒者に集中している。卒業時期が氷河期だというだけで、特定の世代に不利が生じている状況にやりきれない思いもある。
  しかし、嘆いてみても始まらない。厳しい時代だからこそ、自分を見つめ直し、高めていこうとする姿勢が必要である。自分が本当にしたい仕事は何なのか、働くという意味は何なのか、職業観をしっかりと確立することで、皆と同じように「一流企業に入れればよい」という考えに流されることなく、自分に合った仕事、やりたい仕事を見つけることができるのではないか。このピンチをチャンスと捉え、前向きに「就活」に取り組んで欲しい。

(山梨総合研究所 主任研究員 小柳 哲史)