おもてなしの心を大事に


毎日新聞No.331 【平成23年2月4日発行】

  先日、甲斐市双葉北部方面の市民バスに乗車した時、この市民バスをはじめて利用する高齢者が乗車した。すると乗務員が路線、利用時の料金、乗り継ぎの仕方などを丁寧に説明し、乗降時には「お気をつけて」「ありがとうございます」「またご利用下さい」と声をかけていた。おもてなしの心と行き届いた心配りは印象に残るもので、またこのバスを利用したいと思える気持ちの良いものであった。

  おもてなしの心を持って接客することは、顧客にサービスを提供する業種であれば、当たり前のことと言える。しかし県内の路線バス、タクシー、小売店、飲食店、ホテルなどサービス業に従事する従業員にこの接客態度が徹底されているだろうか。
  本県では観光推進に力を入れ、特徴のある様々なメニューを展開して集客を図っている。しかしこれらメニューの中には他の都道府県でも推進しているものがあり、観光客の増加には差別化が求められていることから、何かを加える必要がある。それはメニューの充実も当然であるが、見た目(観光メニュー)は同じでも、他の観光地とは違う何かが必要である。つまり、おもてなしの心を持った接客が必要なのではなかろうか。

  昨年、B級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」でゴールドグランプリを獲得した「甲府鳥もつ煮」も、味が決め手になったことは言うまでもないが、関係者のおもてなしの心を持った接客が好評であったと聞く。差別化が求められる時代だからこそ、観光客や利用者の視点に立ち、おもてなしの心を大事にしたい。
  この接客態度は、職業にプライドが無ければ十分にできることではないだろう。また、関係する地域を愛し、いかにその地を知ってもらい、また来て欲しいという気持ちを持たなければ自然と出てくるものでもない。サービス業に関係する全ての人々がプロ意識を持ち、おもてなしの心・心配りを持って「ありがとうございます」「またお願いします」と言うだけで、またあの声、おもてなしの心に触れたいと思う観光客が増加するのではなかろうか。
  県内のいたるところから「ありがとうございました」という優しい声が響きわたる。そんな県であってほしい。


(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)