人口減少と地方都市の姿


毎日新聞No.332 【平成23年2月18日発行】

  自治体の総合計画や都市計画は人口増加を前提とし、自治体の将来像を展望することが常識であった。しかし、日本では00年~06年の間に人口10万人以上の都市の27.5%が人口を減らし、05年~06年に限れば45.4%が人口減少都市である(「都市縮小」の時代、角川書店)。需給に委ねれば、シャッター街、空き家、空き室、空き地、駐車場が増え、厳しい財政状況では行政主導、補助金による方法もきわめて限られる。

  これは先進諸国共通の悩みでもある。70年代に財政破綻をしたニューヨークで「都市を縮小することで、生活の質的向上を図る」という考え方が生まれた。また、希望の持てない区域については衰退するに任せ、健全な地域だけを支援するという極端な政策も生まれている。欧州では中心市街地を歩行者空間にして、商業、都市サービス、教育機関、住宅を集約するのが通常の活性化策である。また、公営住宅の住戸を拡大し、一部を取り壊し、公園や広場にすることによって生活の質的向上をはかる減築もその施策の一つである。山岳地域の小規模自治体も同様で、土地に余裕がある地区に体育館、図書館、店舗、郵便局、消防署、支所、アパートなどを集約している。近年、山村集落を抱える自治体では、ICT(情報通信技術)による高齢者の生活アドバイスサービスを提供する過疎地版スマートシティの実験を進めている。

  間延びした人口希薄な地域では、少子高齢化した社会生活には厳しく、財政的には都市インフラの維持さえ難しい。都市の計画的縮小、都市機能の集約化をどう実現するか。近年、この課題について国際的なシンポジウムが開催されている。成功したといわれる都市をみても、ほぼ1世代が費やされている。わが国でも大規模ニュータウンの減築、コンパクトシティへの取り組みがあるが、安定的な再生には長期間を要するものになろう。山梨県をはじめ県内自治体の多くは地形の制約もあり、他県の自治体に比しコンパクトで、東京‐名古屋の中間に位置するなど優位な条件を持っている。今後、県土や都市をどう再編するか、行政、産業界ばかりでなく市民の力の結集に期待したい。

(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)