協働で築く子どもの健全育成
毎日新聞No.335 【平成23年4月1日発行】
4月に入り桜が舞う季節となった。街の風景もどことなく昨日とは異なり、新鮮さが感じられる。それもそのはず、そこかしこに初々しい新入学の児童生徒の姿を見かけるからであろう。
このような微笑ましい光景とは対照的に最近、子どもたちが関係する痛ましい事故や事件が報道されている。なぜこれほどまでに、子どもたちにとって、生活しにくい地域社会になってしまったのであろうか。
理由はいろいろあるのであろうが、子どもたちを地域全体で育てるという意識の低下もそのひとつにあると思う。
では子どもたちが心身ともに健全な日常生活を送れるようにするために、私たちはどうしたらよいのであろうか。
それは、最近よく聴く「協働」と言う言葉にヒントが隠されている。協働とは、一般的に住民と行政が手をつなぎ、それぞれの特性を活かして地域のさまざまな課題を地域全体で解決していくことを言う。
これまでも、住民、行政などが連携したパートナーシップによる活動も見られた。しかし、地域の問題を解決する主役は行政で、住民は脇役という構図であった感はぬぐえない。
このような行政主導型の姿勢は、住民が本来もっている地域力、つまり住民による問題解決力を失わせ、ひいては地域コミュニティーをも脅かすことになりかねない。
地域は、住民と行政が対等な立場で協働して築くものであり、地域力を存分に発揮し、さまざまな問題に取り組むことが望ましい姿といえる。
子どもたちの置かれた環境についても、学校や行政などに任せておけばよいという考えを捨てなければ、いつになっても、子どもたちの健全な育成は望むべくもない。
幼いときに、隣人から叱られたという経験を持っている方もいるであろう。私たちの先輩は、子どもを地域で育てるという、知らず知らずのうちに協働を実践していたのではないか。
このように、次代を担う子どもたちを地域全体で見守るという観点からも、私たちは、いつまでも子どもの褒め方、叱り方を忘れない大人でありたいものである。
(山梨総合研究所 主任研究員 村松 公司)