VOL.12「訪日客62%減」


 政府観光局(JNTO)は、4月訪日外客数の推計値が前年同月比マイナス62・5%(減少幅は過去最大)の29万6千人だったと発表した。わが国の外客誘致政策では、「訪日外国人3000万人プログラム」のもとビジット・ジャパン事業が展開され、概ね順調な伸びを示してきただけに、衝撃は大きい。
 観光庁、JNTO、自治体観光部局などは挙げて海外への情報発信に取り組んでいるが、原発事故の収束への見通しが不透明な中、外客数のⅤ字回復は残念ながら望み薄な状況だ。
 外客の誘致は、訪問地にとって物心両面で豊かさをもたらす効果を持つ。地域の尽力で文化、歴史、自然などさまざまな資源を活かした魅力的な観光地づくりが行われると、その普遍的な価値が国の枠組みを超えて評価された結果外客が集まり、そのことに対する住民・関係者の誇りや喜びが更なる魅力づくりへのエンジンとなる。
 多大な努力により培われてきた地域づくりの好循環を断ち切らないためにも、いまは国内居住者が補完的役割を果たすべき時ではないだろうか。厳しい状況下にあっても委縮せず、努めて外へ繰り出し「地域の光を観に」行くこと。ささやかながらこれが一法かと思う。

(主任研究員 中村 直樹)