古くて新しい自治の担い手


毎日新聞No.342 【平成23年7月8日発行】

 この3月まで町内会の子供クラブ役員を務めさせていただいた。恒例の納涼会では、集会所に目白押しの子どもたちに、かき氷や焼きそばを配ったりビンゴ大会を仕切ったりと大わらわだったが、皆の笑顔と歓声で報われたような気分になったものである。

 役員のなり手不足や加入者の減少など、町内会(ここでは自治会、区、組などの地縁団体も含めた総称)を取り巻く環境は決して生易しいものではない。全世帯加入の原則が封建的で時代にそぐわないとか、町内会から課されるルールや労役が個人の自由に反するなどの根強い批判がある。町内会を「やっかいな仕事を押しつける面倒な団体」と捉えがちな住民意識も障壁となっていそうだ。 
 一方、プラスとなりうる状況もある。各地で続々と制定が進む「自治基本条例」では、町内会が地域自治の担い手として法的にも確固たる位置づけを得るケースが多い。豊富な社会的経験を引っさげ第二の活躍の場を求める団塊の世代は、町内会活動への人材供給源としての可能性を秘めている。3.11大震災は身近な相互扶助の重要性について再認識せざるを得ない契機をもたらした。町内会は、こうした風をとらえつつ、地域課題に包括的に対応する最小の自治組織・住民意思を最も濃厚に反映する地域代表団体として、さらに高度で民主的な活動を展開していくことが求められる。

 そのために何が必要か。町内会活動のあり方は、その地域に住まう人々のすがたを映す鏡であるから、何といっても住民の当事者意識・参画意欲が最重要であることはいうまでもない。会への参加はむしろ「権利」と受け止めたいところだ。
 行政によるサポートも要となろう。町内会を「行政末端機構」ではなく自治体の尊厳あるパートナーと見立て、独自の活動の後押しや事業の企画支援、活動実績の広報PR、市政・町村政との意志疎通の緊密化など、細やかな目配りと手厚い支援が望まれる。コミュニティ再生を重要課題に掲げる市町村も多く、施策の充実強化に期待したい。
  町内会に集い、働く人々が今後一層脚光を浴び、自治を担う名誉ある地位を占められるよう、切に願うものである。

(山梨総合研究所 主任研究員 中村 直樹)