熱い地方議会の実現に向けて
毎日新聞No.343 【平成23年7月22日発行】
統一地方選挙も一段落し、首長や議員が新たな職務にまい進し始めていることと思う。
東日本大震災の影響による自粛もあり、山梨県内の選挙運動はいつもと様子は違ったが、怪文書などにより相手候補を誹謗中傷するいわゆる“甲州選挙”は依然として一部に残ったようだ。
近年、分権時代の到来とともに地方議会改革が謳われている。議会は首長と肩を並べ、行政に偏りが生じないようチェックし、バランスを保つことで役割を果たしていく。互いの切磋琢磨がよりよい地方自治につながる。
しかし、これが十分に機能していないと住民に評価されることもある。議案可決率が100%であったり、議員による政策や条例の立案がなかったり、政務調査費に不透明な内容が含まれていたり、と枚挙にいとまがない。
議会を招集しない、専決処分を繰り返す、といった首長側の極端な例もある。
このように書き連ねると、機能不全との指摘も的を射ていると感じられるが、その批判の矛先は議員報酬額と議員定数の削減に向けられてしまうことが多い。事実、議員報酬月額が高すぎるとして日当制を導入したり、議員が多すぎるとして定数を減らしたりと全国で様々な取り組みが行われている。
懸念されるのは、条件を厳しくした結果として議員が少なくなり、議会が本来持っていなければならない多様な人材による、多様な住民意見の集約が困難になることだ。
加えて近年の市町村合併によって行政区域が格段に大きくなっており、住民の声も届きにくくなっている。このままでは改革どころか、更なる衰退こそ懸念されるのが現状だ。
それでも議会基本条例の制定や議会報告会の開催など、積極的に門戸を開いて機能不全の解消を目指している議会も多くなってきた。
こうした動きをさらに発展させ、熱い地方議会を実現させるためには、より多くの住民参加が不可欠になる。先駆的な議会改革においては、そこに必ず住民の声と姿を見ることができる。チェックアンドバランスの機能は、議会と住民との関係においても、その重要性を高めていくことになるだろう。
改革は始まったばかりだ。まずはホームページや広報の記事を閲覧し、自分が住んでいる自治体の議会活動を知ることから始めたい。
(山梨総合研究所 研究員 赤沼 丈史)