VOL.15「罰金5,000ドル」
米国フロリダ州議会は、州内の自治体(カウンティ、市町村)が独自の銃規制条例を制定・維持することを禁止し、10月1日までに既存条例の執行を停止しない場合は、当該自治体の首長・議会議員に個人的制裁(罰金5,000ドル=約38万円)を課す法律を成立させた。これにより、市庁舎、公園など公共施設への銃持ち込みを禁ずる多数の条例が廃止に追い込まれることになりそうだ。住民の安全確保に配慮した自治体の自主的努力を上位の政府が踏みにじる暴挙、と感じるのは筆者だけだろうか。
一方わが国では、議員立法による「運輸事業振興助成法」が8月24日に可決成立し、都道府県が各地のトラック協会、バス協会等に支給してきた多額の補助金について、継続の努力義務が法制化されることとなった。先の事例のような極端なケースではないものの、自治体予算の使途を法律で縛ることになるもので、地方分権の理念にもとる面があると言わざるを得ない。総論として地方分権に異を唱える国会議員は稀としても、各論部分での利害調整の局面においては、様々なバイアスにより自治抑制的な法律が生まれてくる危険性がある、ということを認識する機会となった。「国と地方の協議の場」において実質的できめ細やかな議論が求められる所以である。
(主任研究員 中村 直樹)