「県民の日」の今後を展望する
毎日新聞No.351 【平成23年11月25日発行】
毎年「県民の日」には記念行事に足を運ぶ。特産品販売や活動展示など、「旬の山梨」を集めた会場は歩くだけでも楽しい。今年は少々天候には恵まれなかったものの、かなりの人出があり盛況のうちに幕を閉じた。関係者のご尽力に感謝したい。
「県民の日」(毎年11月20日)は、1871年11月20日に甲府県が山梨県と改称されたことを記念して設けられたもので、県民の日条例は「郷土について理解と関心を深め、ふるさとを愛する心を育み、次代に誇れるより豊かなふるさと山梨を築きあげることを期する日」とうたう。
そこで、少し先走った問いを立ててみた。最近の議論はやや下火ながら、道州制導入の動きが進めば、広域自治体「山梨県」のあり方も変容を迫られる。では、明治の行政機構改革をとらえて生まれた「県民の日」も、やはり行政体の改革とともに滅びていくのだろうか。
答えはNoと推測する。道州治下の山梨エリアの住民が適切に代表される仕組みが考案されなければならないし、そうした仕組みを内面から支える共同体意識は道州の線引き後も続いていく。こうした「住民自治(=地域のことは地域住民自らが主体的に決定)」と「地域コミュニティ」の2つの概念に支えられ、現行の理念を継承する何らかの記念日は残る可能性が高いと思うからだ。
防災の観点から地域コミュニティに改めて光が当てられ、その再生・強化が課題となる中、コミュニティの今を見つめ直し、その存在を喜び祝う機会、非日常の祝典は重要性を増していると言える。毎年1回決まって私たちに訪れる「県民の日」は、山梨に立脚する「私」や「私の住まう地域」を再認識するハレの日と位置づけることもできそうだ。「県民の日」の定着度合いはコミュニティの絆の強度を測るバロメーターと言ったら言い過ぎだろうか。「母さん、お銚子もう1本」「なぜ」「だって今日は県民の日だろう」。強いコミュニティとは、案外こんなやり取りに後押しされているかもしれない。
地域社会への貢献を関心事とする個人や団体、企業としても、活動のアピールや協賛行事の展開など、「県民の日」をより自覚的に活用する視点を持ってみてはどうだろう。11月は山梨にとってより華やかな時節になるに違いない。
(山梨総合研究所 主任研究員 中村 直樹)