さっそうとしたボランティア


毎日新聞No.352 【平成23年12月9日発行】

 阪神大震災があった1995年はボランティア元年と呼ばれている。そして現在。東日本大震災の影響が大きいのだろう。以前と比較してボランティア活動がさらに盛んで、より身近になったと感じる。私自身も気仙沼においてがれきの分別作業を経験したが、被災地へ向かういわゆる「ボランティアバス」の隣席に座った男性はすでにこれが数度目の出発とのことであり、今後も休日を利用して参加したいと言っていた。さっそうとしたボランティアは元気であった。

  さて、被災地でなくてもできる身近なボランティアに、ボランティアファイヤーファイター(消防団員)がある。団員のなり手不足が叫ばれて久しく、団員数は減少の一途をたどり続けているのだが、うれしい情報もある。団員に占める女性の割合が増加しているのだ。消防団の活動現場も多様化しているため、男性だけでは対応できない場面での活躍が期待される。
 また、団員が飲食店などで割引サービスが受けられる「消防団員サポート店」制度を発足させた南アルプス市での取組も、団員減少傾向の歯止めとなるか注目されている。
 言うまでもないことだが、地域の安全・安心を守るのはそこで暮らしている者だ。先般の震災においても、多くの消防団員が献身的に職務に従事された。地域に暮らし、自らの本業のかたわらで地域を守ろうとするその精神に対し、改めて敬意を払いたい。
 先日、法政大学大学院のある研究室が発表した都道府県の「幸福度」総合評価。山梨県は14位と総合評価ではまずまずの結果だったのだが、人口10万人当たりの出火件数は全都道府県中2番目に多いなど安全・安心部門はワーストの47位だった。

  ボランティアを待っているのは被災地だけではないだろう。目につかないだけで、自分が住んでいる地域も厳しい現状にさらされているのだ。照会窓口は自治会や市町村担当部署になっている。さっそうとしたボランティアファイヤーファイターたちの活躍を地域は待ち望んでいる。
  なお、消防団員は非常勤特別職の地方公務員であり、活動に際しては報酬や充実した災害補償制度があることを確認のため申し添える。

(山梨総合研究所 研究員 赤沼 丈史)