公共交通利用倍増のために


毎日新聞No.354 【平成24年1月20日発行】

 年末・年始の休みで、お腹周りが一段と目立つようになった。ダイエットを兼ね、車に頼った通勤手段の見直しを試みている。
 実際に、鉄道、バスなどの公共交通を利用してみると、バス利用者が際立って少ない。客層を見ても、高齢者、中高生などいわゆる交通弱者の方々が多く見受けられる。
 路線バスは、自動車利用が増加するほど、道路が混雑し、移動に時間がかかるなど、サービス水準が低下し、利用客が減少する。事業者は採算性を確保するため運賃値上げや、運行本数を減らす。利用客は不便な公共交通に見切りをつけ、更に利用客が減少する。このような負のスパイラルが続いている。
  「平成17年甲府都市圏パーソントリップ調査(移動手段、目的など1日の動きを調査)」によると、甲府都市圏の通勤時の自動車利用率は81%と高く、一方で鉄道(2%)、バス(1%)など公共交通の利用率は極めて低くなっている。

 地域公共交通が維持できなくなった場合、交通弱者の移動手段を、家族等の送迎で代替しなければならないなど市民生活に大きな影響を及ぼす。少子高齢化が進む今日、地域公共交通の確保に向けて、住民一人ひとりが自らの問題と捉え、改善策を検討していく必要がある。
  過日、山梨県リニア交通局主催の「人と環境にやさしい(エコ通勤)研修会」で、山梨大学の佐々木教授は、山梨は車社会だからと諦めず、地域公共交通利用の倍増という目標を掲げてみてはと、提起されている。つまり、81対1(車対バス)の利用割合を、80対2へ転換するためには、自動車利用者が81回の通勤のうち1回だけバスを利用したり、あるいは81人の自動車利用者のうち1人がバスを利用すればよいと考えると、倍増目標も達成可能である。

  県内の多くの市町村では、既存の公共交通を補完する、デマンドバス、コミュニティバスといった、新公共交通を運行しており割安な運賃で利用できる。
 新年を迎え、81回の通勤のうち1回だけでも、各市町村が提供する新公共交通など、自家用車以外の交通手段を利用しては如何だろうか。徒歩、自転車、公共交通を組み合わせて利用することで、健康増進にもつながる。

(山梨総合研究所 主任研究員 矢野 貴士)