首相は大局的視点再考を
毎日新聞No.356 【平成24年2月17日発行】
平成24年2月8日付けの本紙創刊140周年「毎日新聞にのぞむ」に野田首相が寄稿し、「毎日新聞で毎朝、必ず読むのが『マーク・矢崎』の『今日の星占い』」と記している。きっかけは数年前、本紙を衆議員会館で読んでいた時に、 間違って爪先で緊急通報装置を鳴らした日の占いが「足元に注意」であったためという。
最近の首相の動向を見ていると、本紙の占い欄に、「迷わず己の信念のもとに進め」という論調の占いがあったのではないか、と勘繰りたくなる状況である。首相は「社会保障と税の一体改革」について、まるで何かにとりつかれたように進めようとしている。おそらく、国民的なコンセンサスも野党との議論も進まないまま、本日、消費増税大綱が閣議決定されることだろう。
確かに、人口構造が急激な変化を遂げている以上、将来的には消費税の増税などを伴う税制改革と社会保障制度の見直しが必要なことは、国民全体が理解していることである。しかし、今の日本を眺めると、国民には、それが最優先課題であろうかと疑問に感じているのではなかろうか。また、増税を推進するにしても、民主党が主張してきた徹底的な無駄の削除への取り組みや、将来的に税率を何%にするのかという根拠、そこから見える将来像への説明が不足している。まずは増税ありきと印象が強く、国民からの支持が遠のいているのではなかろうか。
世界規模の経済混乱の中で、日本経済を支えてきた輸出型大企業は軒並み大赤字を計上し、円も高止まりのままである。まずは日本の進むべき成長戦略、対策を示し、国、地方がそれぞれの役割の中で官民一体となり着実に実行しなければ、日本の各産業は崩壊し、とても社会保障云々といえる状況にはならないだろう。その上で、この国の安全保障についてしっかりと固め、震災復興対策など推進し、税制・社会保障問題について語るべきではなかろうか。
野田首相は5月20日生まれである。首相が眺める本紙占い牡牛座の欄に、「一度立ち止まり大局的な視点とは何かを見直し、優先順位を付けて地道に進んでこそ大吉」という論調の占いが出ていて欲しいものである。
(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)