小学校をコミュニティの中心へ
毎日新聞No.357 【平成24年3月2日発行】
少子高齢化、人口減少は全国すべての自治体にとって最大の問題である。今話題の税と社会保障、教育改革、地方分権など全ては、この問題に由来している。
この10年の間で、学校に対する考え方も大きく変化してきた。小学校とコミュニティセンターを併設したり、廃校をコミュニティセンターに転換するケースが現れている。小学校区は、住民にとって最も身近な施設であり、アクセスも容易である。こうしたケースが今後とも増加するものと思われる。
古くは、1970年代初頭、すでにイギリスでは学校とコミュニティとの間で同一施設を共用する計画がスタートしている。理由の一つは教育機会の平等化に向けての総合制中等学校への改変に伴い、施設設備の更新が必要になったこと。もう一つの理由は市民の成人教育、コミュニティ活動、レジャー活動の場所が必要になったことである。
ある地方都市の中学校の例では、中学校低学年(日本では小学校高学年)用の学校施設にコミュニティ施設として老人クラブ、ファミリーセンターを設置していた。これら施設は学校施設の一部を転用したもので、ファミリーセンターは学校近隣(徒歩圏内)の母親と幼児のための施設である。近くには幼稚園が位置しており、最大のニーズは母親が家政や育児について私的に話し合ったり、幼児を遊ばせたりする交流の場である。老人センターは居間と食堂から成り、生徒用の食堂に隣接。昼食を摂り、談話して、時間を過ごす施設で、元気なお年寄りが参集していた。
「子供たちの教育を地域で支える」、「食育」、「地域での見守り」など個別の自治体計画の中でスローガンが掲げられているが、個人化したコミュニティを維持するためには、ファミリーセンター、老人センターなどの社会的仕組みが必要であるとともに、世代間交流が日常的に、自然に生まれるような社会的交流の場としての施設のあり方を検討する必要がある。
県内自治体では市町村合併を繰り返し、庁舎も再編統合され、地域コミュニティの様々なニーズを受けいれる機能は衰退している。日常生活に最も近い小学校を地域コミュニティとしてどう活用するか、検討してみてはどうか。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田 裕久)