Vol.164-1 山梨学院大学からの提言 『ICTイノベーションによる地域・企業の活性化』(4)


連載(4)ICTイノベーションによる山梨活性化について

【山梨学院大学 経営情報学部 学部長 齊藤 実】

はじめに

『ICTイノベーションによる地域・企業の活性化』の連載シリーズでは、高度に整備されつつあるICTインフラストラクチャを如何に活かして地域社会や企業すなわち山梨の活性化に役立たせるか、という観点から山梨学院大学・経営情報学部の教授陣の主張を展開している。
 本連載シリーズの初回として、地域社会や企業の活性化に貢献する“ICTイノベーション”の必要性について述べた。第2回目は「クラウド・コンピューティングの概要とその有効性について」、続く第3回目は「情報マネジメントとセキュリティについて」と題して、各々ICTの最新動向と留意点などについて、大企業の中枢で経営企画管理を実践してきた教授から貴重な考え方を披歴していただいた。
 今回は連載の最終回として、ICTイノベーションのパワーで山梨県の企業や自治体などを如何に活性化できるかという重要なテーマについて論ずる。まずは山梨県の景気の厳しい現況について簡単にふれる。続いて山梨県の将来の人口推計について述べる。いずれも楽観視できない状況にある。このような状況を僅かでも打破できる可能性があるICTを利活用した企業経営イノベーションについて論述する。最後の章では、著者が大学の教壇に立つ前、NTT本社研究所で研究開発業務に携わり特許出願などを行ってきた経験から、ICT研究者的な発想から地元山梨を少しでも活性化できる可能性があると思われる幾つかのICTアイディアのシーズについて述べている。

1.山梨県の現況

 山梨の地場産業としては、伝統ある宝飾・水晶加工・ワイン産業などがあるが、いずれも産業規模は決して大きなものではない。これに対して近県の静岡県には全国的な企業として、ホンダ・ヤマハ・スズキなどがあり、長野県にはセイコーエプソン・信越化学などがある。いずれの企業も今や大企業化となり、本社を東京などに移した会社もあるが地元発ということで工場や関連企業も多数地元に存在している。
 全国いずれの地方の県でも更なる景気浮揚策の常套手段のひとつとして、「企業誘致」を選択している。現知事も重要課題の一つに位置付け、県外から優良企業を呼び込むことで雇用を増やすとともに、税収増を図り財政健全化につなげるとしていた。現知事就任の直後、企業誘致に専門的に当たる産業立地室を新設した結果、ある程度の成果も得られた。しかし、これ以上に、かつて誘致した大企業の事業所、工場などの山梨からの撤退・縮小がここ数年止まらない。パイオニア・パナソニック・東京エレクトロン・カシオ・NECコンピュータテクノなど有力企業が多数に上る。各企業の経営事情によるものだが、今後更なる県内雇用の喪失と税収の落ち込みが非常に懸念されるところである。なお、企業誘致に向けて新設された情報産業振興室は、情報技術系企業の立地を目指して、JR甲府駅北口県有地の高度情報化拠点整備計画に基づき、核となる情報技術系企業の誘致に当たることがミッションであった。しかしながら、不況の煽りもあって2009年2月に計画は凍結されたまま、その後は誘致活動をほとんど行っていないようである。
 さらに、大きな予算を投じた甲府駅北口の再開発に続いて南口も再開発に着手するようであるが、本章の締めとして、本News Letterの平成23年10月号に山梨総研に在籍していた日本総合研究所・藤波氏の『公的施設を造れば景気が良くなり、地域の活力が高まると考えるのは、時代錯誤の驕り以外の何物でもない。』という直言を再掲しておく。

2.山梨県の将来の人口

 前章で述べたように官による積極的な投資にもかかわらず、山梨県の人口減少は予想を上回るスピードで進みつつある。人口推計結果によると、2035年の山梨県には74万人余りの人間しか住んでいないことになる。年齢階層別の推計からも少子高齢化の進展が早いことが分かる。予想外の急速な人口減少は、死亡者数が出生数を上回る自然減よりも、転出者数が転入者数を上回る社会減の影響が大きかったということも分かっている。
 予測よりも速いペースで人口減少の要因のひとつは、若い人材の大量流出である。昭和40年代、当時県内一の進学校であった甲府一高の多くの優秀な卒業生は旧帝大や有名私大に巣立ち、中央官庁や大企業に就職したままで郷里山梨にはほとんど帰ってこない。山梨大学の卒業生も、医学部はもちろん工学部の大学院生の多くは県外に流出し続けている。
 いずれにせよ、加速度的な人口減少と少子高齢化の急速な進行は、近い将来の尋常ならざる窮地への落ち込みを明示している。約20年で10万人が減少する山梨県の姿を、今こそ県内企業も行政機関も医療・福祉・教育機関も真摯に思い描くことが重要である。人口の減少は経済活動など全ての社会活動の縮小を意味する。氷河期にマンモスが絶滅したように、あらゆる肥大化したままの“組織”は潰れる。一般に、組織のトップは単純に拡大路線を望む。しかし、この人口減少という厳然たる事実を直視し、上手に最適化した組織のみがサバイバルできるものと確信する。

山梨県の推計人口

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推計年(西暦)

2010年

2015年

2020年

2025年

2030年

2035年

427,218

417,763

405,600

391,758

376,330

359,178

446,927

439,133

428,660

416,380

402,534

386,656

総数(人)

874,145

856,896

834,260

808,138

778,864

745,834

山梨県の年齢階層別の推計人口

年 齢

2010年

2015年

2020年

2025年

2030年

2035年

0~4

35,054

31,082

28,829

27,274

25,600

23,633

5~9

38,640

35,136

31,157

28,899

27,341

25,665

10~14

43,306

38,601

35,101

31,127

28,871

27,315

15~19

45,557

43,067

38,389

34,908

30,956

28,715

20~24

44,335

42,596

40,271

35,899

32,646

28,952

25~29

45,879

43,186

41,495

39,231

34,973

31,807

30~34

51,093

45,734

43,053

41,371

39,116

34,873

35~39

60,746

50,856

45,528

42,864

41,193

38,951

40~44

58,647

60,406

50,583

45,290

42,644

40,985

45~49

56,380

58,045

59,806

50,098

44,866

42,255

50~54

54,313

55,805

57,494

59,270

49,678

44,508

55~59

60,508

53,646

55,178

56,900

58,699

49,237

60~64

66,072

59,824

53,109

54,681

56,437

58,261

65~69

54,682

64,274

58,318

51,863

53,467

55,243

70~74

47,197

51,856

61,166

55,675

49,651

51,292

75~79

42,776

43,065

47,589

56,378

51,525

46,117

80~84

34,837

36,488

37,121

41,371

49,332

45,358

85~

34,123

43,229

50,073

55,039

61,869

72,667

合計

874,145

856,896

834,260

808,138

778,864

745,834

3.ICTを利活用した企業経営のイノベーション

 前章で明らかにしたように、本格的な少子高齢化社会に向かっている山梨県では、自治体や企業のみならず、個人も含めてこれまでとは違う新しい思考で成長への道筋を切り開いていく必要がある。
 総務省が調べた全国自治体のICT利活用状況からみると、地域におけるICTシステム利活用事業の実施率は「防災」分野のみが28.3%と固く、その他の分野(「医療・介護」「教育」「就労」「観光」「地域産業」等)は概ね10%以下と低調であった。各種公共サービスには自治体の努力により更に多くのICTリソースを利活用してもらいたいものである。地域産業の分野については、自治体の関与にも限度があるので、各企業の自助努力が求められる。
 そこで、地域の中小企業の場合は、高度に普及しているICTというインフラをどのように自分の会社の業務改善や新規事業の開発に活用していくかという事になる。特に、10代からパソコンや携帯電話などでネットに慣れ親しんでいる若手の経営者は、ブロードバンドやWi-Fiなどのモバイル環境を当然の選択肢として経営に取り入れることにより、既存のビジネスの枠組みを超えるICTユーザーの視点に立った新たなビジネスモデルを構築できるであろう。そこには、若手経営者自身による積極的な情報発信や外部の安価なICTサービス活用すなわちクラウド化などによる企業マネジメントの発展・進化が期待できる。このあたりの具体論は、企業ごとの経営状況や特性に合致したものにすべきであるので、個別に技術コンサルティングが必要となるであろう。
 ICTを導入して経営革新する気のある中小企業への行政サイドの支援もほとんど毎年大きく変わることのない施策が実施されているが、中小企業支援のポイントを抜本的に考え直すべき時期にきているのではないだろうか。

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 もう一つの視点は、ICTを取り入れた企業間のコラボレーションによる活性化であろう。山梨県の場合、前述のように中小企業がほとんどなので、同業種間あるいは異業種間のコラボレーションにより、パワーを強化する戦略が有効である。このようなコラボレーションは県内の製造業などで一部見受けられるが、さらにICTを利活用して全国あるいは国際的な発信力を拡大していくことが重要である。このようなICTを用いたマネジメントの実践が、新たなアプローチとして県内中小企業の活性化に繋がるものと期待している。

4.ICTを活用した山梨活性化のアイディア

 ここまで述べてきたように、山梨県はかなり厳しい状況に至っている。臥薪嘗胆のままでは活路は見いだせない。山梨の長所を活かし、短所を逆手に取った活性化のためのアイディアが望まれるところである。そこで、著者が専門とするICTに関わる分野でのアイディアを“船中八策”ではないが8つほど簡潔に述べる。

(1)データセンター、IX(Internet eXchange)の創設

 情報サービス産業協会(JISA)は、災害時の事業継続管理(BCP)の観点から、データセンターの地方分散設置を経済産業省などに要請している。そこで、巨大地震・強烈台風などの大規模自然災害が比較的少ないと考えられる甲府盆地へのデータセンターの創設が有望と考えられる。データセンターは、金融機関・自治体・一般企業などの日々のオンライン情報やバックアップ情報を取り扱う。クラウド化が進展する現在、需要は大きいであろう。
 また、インターネット上のプロバイダ(ISP)、インターネットデータセンター(IDC)同士の相互接続ポイントIX(Internet eXchange)は、東京に集中している。先の大震災では、SNSなどインターネットを通じた情報流通が安否確認などで大きな役割を果たしたが、東京直下型の地震が発生し、多くのIXが被災した場合には、こうした機能が利用できなくなり、情報流通の観点から極めて懸念される。このIXも甲府エリアへの設置も考えられるのではないだろうか。

(2)超大規模アーカイバル・データセンターの創設

 上記同様、自然災害に強いので国内の様々なアーカイバル・データの蓄積基地を設置が考えられる。特に、今後情報量が爆発的に増加するといわれるディジタル情報を確実な長期保存が可能な記録メディアに記録することが必須である。これらの記録メディアは、オートチェンジャなどの出し入れするメカニクスも必要である。もちろん、最適な温度・湿度などの環境を完全管理しなければならない。また、長期保存の実践と同時に、著者も博士論文(参考文献)で述べているように、ディジタル情報の確実な長期保存の研究もあわせて行うべきであろう。
 一方、このような特殊な環境を保証した施設は、ディジタル情報・アナログ情報を記録したメディアの保管のみならず、植物の種などの永久保存すべきもの全てに利用すべきであろう。超大規模アーカイバル・データセンターの建設場所には安定環境の地下の利用も考えられる。地上部は公園などの緑地にして災害時の退避エリアとして利用することも可能であろう。

(3)ICT総合教育機関の設置

 県内のICT関係の大学・大学院・専門学校などの学生や県内ICT企業の若手エンジニアに対して、最先端のICT教育を実践する場が無い。この現状では、優秀な学生は就職先として、首都圏のICT企業しか考えられない。県内のICT企業も人材育成もままならず大きく成長しがたい。そこで、長年放置状態になっているJR甲府駅北口の高度情報化拠点予定地に、このようなICT人材の総合教育機関を是非設置してもらいたいと考える。交通アクセスも良いので、ICT関係者の教育・交流の場となるだけでなく、大学コンソーシアムの拠点ともなるであろう。就職前の県内の大学生にとっては良きインターンシップのフィールドとなり、就職の契機にもなる。企業側にとっても優秀な学生の採用の助けになるであろう。県内ICT企業に就職する優秀な学生が増えるので、結果として県内ICT産業の底上げに繋がると期待できる。
 さらに、その中には「ソフトウエア図書館」的な発想の施設も加えるべきであろう。これは、高機能高価なハードウエアが必要なソフトウエアの試用や検証が実施できる施設・設備である。そこに行かなければ試用・検証できないソフトウエアを用意しておき、県内ICT企業のエンジニアや県内ICT関係の大学・大学院・専門学校などの学生・教員に利用してもらうのである。

(4)ソフトウエア開発・流通センターの創設

 我が国のソフトウエア産業は欧米に比して非常に悲惨な状況にある。経済産業省の少し前の調査結果では、ソフトウエアの輸出は320億円、輸入が3,646億円ということである。我が国にIT省が未だに無いどころか、かつて郵政省内あったものを総務省に含めてしまうという見識の無さである。本来は、情報産業を国家の重要世界戦略の中に位置づけるべきでなないだろうか。
 ところで、以前甲斐市の赤坂ソフトパークはソフトウエア開発の拠点を目指していた。当時リモートオフィス・リゾートオフィスなどのブームもあり、数社が存在していたかと思うが、現在は株式会社ハル研究所の開発センターと専門学校サンテクノカレッジくらいである。着眼点は良かったといえるので、立て直しは可能ではないかと思う。
 そこで、ひとつのアイディアとして、ソフトウエアの“流通”という見方がある。ソフトウエアの完成品ではなく、「部品」の塊と捉えてそれらの販売流通を考えるのである。すなわち、ソフトウエア部品の流通網の構築が考えられる。上記の「ソフトウエア図書館」の中にこの考え方があっても良い。ソフトウエア部品は、インテリジェンスの集積物とも言える。数学的な発想に基づくアルゴリズムなど知的財産の塊である。これらの管理も加えたソフトウエア開発・流通センターの創設を提案する。

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(5)ICTフル活用の医療特区

 先見性のない国の研修医制度の変更などによって、全国的に地方医療の崩壊したままの状況にある。山梨でも医師不足により地域の病院で診療科の閉鎖や休止が相次いでいる。山梨には「がんセンター」ですら無いという医療環境にある。救急患者対応医療や小児科・産婦人科など慢性的に不十分のままであり、救える命も救えない医療貧困県になっている。このような状況に対して、ICT活用の観点から考えられるものとして以下の提案をしたい。

  1. 遠隔通信や医療ロボットを活用した高度特殊な診察や治療が実施できる環境を整えるべきであろう。これにより、東京に集中する優れた医師によるオンライン遠隔医療・ロボット手術などが実現できる。
  2. 中国人富裕層など外国人をターゲットにした高度な医療検診と観光を組み合わせたツアープランの早期実現も有効であろう。いわゆる「医療ツーリズム」である。外務省は、温泉湯治などにも使える「医療滞在ビザ」も用意して受け入れを促進している。他県よりも早く、富士山・温泉などの観光資源とセットで人間ドックなどを組み合わせたプランを実現すべきであろう。

(6)ICTを活用した景観などの広告PR

 ラスベガスと言えば、真っ先に巨大なホテル・カジノが立ち並ぶラスベガスブルバードを思い浮かべる。一方、すっかり過去の場所となってしまったラスベガスのダウンタウンに観光客を呼び戻すために大改装をした結果、“フリーモント・エクスペリエンス”が生まれた。数百mに及ぶアーケードの天井部分にLEDを多数配置して、コンピュータ制御でCG的な様々な動画を鮮やかに展開するものである。いわゆる「大規模LEDのショー」である。ラスベガスに来た多くの観光客が訪れて賑わいを見せている。
 アイディアとしては、このようなコンピュータ制御のCG動画をリニアモーターカーの多くのトンネル内壁に映し出すものである。リニアモーターカーは超高速で走行するが、画像を列車速度に同期させれば乗客の車窓には、きれいな画像が映し出されるであろう。コンテンツは、もちろん山梨の観光資源・イベント紹介・山梨県や企業のCMなどが考えられる。既存のJR中央本線の笹子トンネルなどでも可能であろう。画像としては、静止画も動画も可能であり、実現には多くの特許申請が必須であろう。

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(7)自然エネルギー研究開発センターの創設

 晴天率も高く日照時間が長いと山梨の利点を使った太陽光発電は有望であろう。山梨大学工学部のクリーンエネルギー研究センターは燃料電池の開発拠点になっているが、約40年も前から先見性高く着手された太陽光発電についても同センターで継続的に研究されている。現在、NTTファシリティが北杜市で太陽光発電の実証実験を行っているが、国内有数の“自然エネルギー研究開発センター”を創設すべきである。
 一方、環境に対する意識が高いためか欧州を旅行すると多くの国で風力発電の風車を良く目にする。最近の統計データによると、世界の風力発電はここ10年で出力が10倍となり、2011年末で約2億4000万kWに達している。ちなみに、2010年末で原子力発電は約3億9000万kWであるので、風力発電の寄与が大きくなっていることが分かる。最近はやや少なくなった八ケ岳おろしなどの独特の風の流れや山間部での乱流や落雷に強く賢い風力発電システムについても、上記の“自然エネルギー研究開発センター”であわせて研究開発したいものである。
 このように山梨県に“自然エネルギー研究開発センター”を創設する利点は、太陽光発電および風力発電を身近でフィールドで実験検証できる環境がある点にある。かねてより都留市が着手してきた小水力発電など大小の河川が多い山梨の地形的特徴を活かした水力発電も再開発の余地がある。加えて、温泉が多い山梨ならではの地熱発電も真剣に検討すべきであろう。
 さらに、ICTを駆使して、自然エネルギー発電のみならず効率良く電送分配するいわゆる「スマートグリッド」の研究や実証実験も甲府エリアで実施可能であろう。甲府を中心とした国中地域を“シリコン・バレー”ならぬ“エネルギー・バレー”と呼ばれるようにしたいものである。

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(8)ICTシンクタンクの創設

 NTTの本社研究所には数千人の研究者が勤務している。同じく日立・富士通・ソニーなどのICT系の大企業にも独自の研究所があり多数の研究者が勤務している。ICT大企業の研究所は、大学とは桁違いの膨大な研究費を費やして、基礎から応用まで幅広い研究開発を行っている。これら中には、ノーベル賞レベルのものも含まれる。これらの優秀な研究者も50歳前後に達すると、第2の人生を歩むことになっている。大学教授に就任するケースもあるが、その多くは子会社などへの転籍を余儀なくされている。最近は、多くの優秀な研究者や技術者が中国や韓国などの企業に頭脳流出し、結果として日本の企業を脅かすことになっている。日本にはこれらの優秀な研究者の受け皿になる組織が極めて少ないためである。そこで、彼らを集めてICTなど理系のプロジェクトを請け負うような組織を山梨に創設できないであろうか。

“山梨総研”は事業内容から見て明らかなように文系よりのシンクタンクであろうが、ここでは理系よりのシンクタンクの創設を提案する。主なプロジェクト案としては以下のようなものが考えられる。

  1. 原発事故現場などの過酷な環境でも様々な作業が可能な本当の意味で役立つロボットの新規開発
  2. プラントやシステムの高信頼度化のための設計アルゴリズムの研究開発
  3. 本章上記提案の各ICT関係のアイディアの研究実用化
  4. 上記提案のICT教育機構における県内学生や県内ICT企業の若手エンジニアのICT教育指導

5.最後に

 山梨学院大学の経営情報学部は、情報化社会の本格的な到来を予見して、情報技術を活用したマネジメントの教育・研究を目的に創設され、以来18年目を迎えようとしている。一貫して「経営」と「情報」の両面のバランスの良い教育を実践するとともに、地域に密着した大学として、本経営情報学部を挙げて自治体と連携して県内の各種企業の経営支援やICT利用促進などに活動にも邁進してきている。
 特に、本学はかねてより山梨県から「地域経営支援委員会」の設置を要請され、ここを中心に多くの地域企業に対して、経営支援・マーケティング調査・特許調査・ICT導入などのコンサルティングを実施してきた。
 今後とも、第3章で述べたようなICTを利活用したイノベーションを県内の企業に具体的にアプライさせていきたい。また、第4章で述べたようなICT を活用した個々のアイディアに関しても、ご興味を持たれた方がおられれば積極的に御相談に応じていきたいと考えている。もちろん、従来から実施している県内企業のマーケティング調査などの経営支援も継続的に行い、地域企業の活性化のために微力ながら貢献していきたい。

【参考文献】

  • 藤波 匠(日本総合研究所 主任研究員)、『行政に奢りはないか?-「民」の力を引き出す黒子としての「官」』、山梨総研News Letter、Vol.159-1(平成23 年10 月28 日)
  • 齊藤 実・笠井 易、『山梨県の人口および個人所得データの推計と考察』、山梨学院大学経営情報学論集、
  • 齊藤 実、『山梨学院大学からの提言 「ICT イノベーションによる地域・企業の活性化」連載(1)ICT イノベーションの必要性について』、山梨総研News Letter、Vol.160-1(平成23 年11 月30日)
  • 金子勝一、『山梨学院大学からの提言 「ICTイノベーションによる地域・企業の活性化』連載(2)クラウド・コンピューティングの概要とその有効性について』、山梨総研News Letter、Vol.161-1(平成23年12月26日)
  • 金子勝一、『山梨学院大学からの提言 「ICT イノベーションによる地域・企業の活性化」連載(3)ICT マネジメントと情報セキュリティについて』、山梨総研News Letter、Vol.163-1(平成24 年2 月27 日)
  • 齊藤 実、『大容量ディジタル情報記憶の高信頼化の研究』、博士論文、名古屋大学