交通マナーの向上を


毎日新聞No.363 【平成24年5月25日発行】

  平成22年総務省「都道府県別道路交通事故」によると、本県は人口10万人当たりの交通事故件数で全国8番目となっている。また最近では、高齢者の交通死亡事故者が増加傾向にあるため、山梨県警察では、高齢者を守る「3るーる励行運動」を実施し、運転者に「見る」、「止まる」、「ゆずる」の「3るーる」励行実践を求めている。
  しかしながら、県内の交通マナーを眺めてみると、これら3ルールは全くと言っていいほど守られていない。幹線道路から少し住宅地に入った狭隘道路では、朝夕を中心として、制限速度20キロ、30キロであるところを50~60キロ近くで走行する車を目にする。また、狭隘道路から幹線道路への合流では、一時停止線で止まる車は稀で、歩行者や自転車が横断しようとしても、無視するように幹線道路に車の先端部分を出してきて、少しでも車間があると強引に合流する。信号のある交差点では、黄色信号で止まる車はほとんどなく、明らかな赤信号でもスピードをあげて侵入してくる場合が多い。交差点で右折車がいる場合は、右折を妨げるように、直進してくる車が急にスピードをあげる場合もある。また、制限速度を守って走る車のすぐ後ろにつき、いわゆる煽り運転をするドライバーもいる。その煽り運転をする車は、後部座席に子どもが乗っている女性ドライバーであることもある。逆に、「見る」、「止まる」、「ゆずる」という交通マナーを実践している車を見かけた場合、ナンバーを確認すると県外のナンバーであることが多い。

  最近では、京都府、千葉県などで通学時の児童を巻き込む痛ましい事故も起こっている。この事故後も登下校時の児童が通る狭隘道路を猛スピードで走る車を多く見かける。事故が起こってからでは遅い。
  「見る」、「止まる」、「ゆずる」という「3るーる励行運動」は、高齢者だけを対象にした運動ではなく、全ての運転者が運転中に意識する必要のある行為であり、運転者が当たり前に守るべきことである。

  先を急いでも、交通マナーを守って走っても、目的地までの到着時間は10分も変わらないはずである。心にゆとりを持って当たり前のことを実践し、歩行者・自転車、また運転者にも優しい交通環境になることを願っている。

(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)