Vol.169-2 甲府市中心市街地活性化にむけて〈 後編 〉


【山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮】

1 はじめに

 前編にて、甲府市中心市街地活性化基本計画とその現状を述べた。甲府駅北口整備が終わり、数年のうちには県立図書館、甲府市庁舎建設、県防災新館建設、甲州夢小路整備等の事業が終了する。甲府市の歴史の中で、近年、ここまで街の景色が変わる状況を目にすることはなかった。今、まさにまちづくりのビックチャンスを迎えていると言える。このチャンスをより推進し、甲府市中心市街地(以下中心市街地と記載)を活性化するためには、活性化とはどのような姿であり、誰のために行うのかを明らかにする必要がある。その上で、どのようなコンセプトでまちづくりを進めるのかを示し、このまちづくりに関して足りない部分(課題)を補っていくような地道な努力を継続すれば、甲府市の特性を活かした活性化の方法があるのではなかろうか。まちづくりと活性化を一体に考えることが重要である。後編においては、これらに関する若干の提言を加えたい。

2 甲府市中心市街地活性化の方向性について

 中心市街地活性化については、どのような姿になれば活性化されたことになるのか、その姿を明らかにすることが重要である。図表1は昭和60年以降の中心商店街の歩行量調査結果であるが、これをみると、昭和61年に約38万人(金土日3日間)とピークを記録し、多くの買い物客等でにぎわっていたことがわかる。しかし、その後、多少の増減はあるものの、歩行量の減少傾向が続き、平成22年には16万7千人あまりとピーク時の2分の1以下の水準まで落ちこんでいる。

図表1 甲府市中心商店街の曜日別歩行量の推移(丸の内・中央地区)

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出典:平成23年甲府商工会議所グランドデザイン実施計画書

 中心商店街の歩行量調査からわかるように、多少の増減があるものの、傾向としては甲中心市街地には人が集まらなくなり、買い物や飲食などをする人が減少し、売上減、商店の閉店などの負のスパイラルにつながっていると想定できる。活性化の目指す姿とは、昭和61年に歩行量が38万人を記録したような姿、つまり多くの人々が中心市街地に集うことにより、そこに購買活動が生まれ、地域の商店に活気が出るような状況にこそ最終的に目指す姿があるのではなかろうか。この結果、直接的には各商業施設のための活性化になるのであろうが、中心市街地が活気あふれ、訪れて楽しく、住んで楽しい街になる。
 では、どのような方向性により、中心市街地に人々が集う状況になるのであろうか。
 図表2は、国立社会保障・人口問題研究所から出された「日本の都道府県別将来推計人口」(平成19年5月推計)に国勢調査による本県の人口実数を重ねたものである。
 「日本の都道府県別将来推計人口」による予想では、平成22年の人口は87万2千人となっているのに対し、国勢調査による実数では86万3千人ほどであり、推計値を9,000人ほど下回っている。つまり本県は、平成19年の推計値よりも早く人口が減少していて、このままの傾向で推移すると、今後20年間に10万人以上の人口が減少することになる。

図表2 日本の都道府県別将来推計人口」及び国勢調査からみる本県の人口実態

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出典:「日本の都道府県別将来推計人口」(平成19年)および「国勢調査」(H22)より作成

 

 また、図表3から本県における総合商品販売額の推計をみると、今後20年あまりで2,000億円ほどの減少が見込まれているなど、本県では人口減に伴う消費市場の縮小の傾向は今後とも継続するものと想定される。
 このような状況の中で、甲府市周辺には大規模商業施設があり、甲府市および周辺の消費者を奪いあう現状となっている。これら商業施設は、大規模の駐車場を完備し、多様な店舗、商品があり、大量に商品を仕入れることが可能なことから価格面でも個人商店に対し優位性を持ち、なおかつ映画館などの娯楽施設も有するなど、消費者ニーズをいち早く取り込み多くの人々で賑わっている。
 中心市街地は、これら商業施設と競い合い再び人々を呼び込むことができるのであろうか。県内、甲府市内における既存の消費者をターゲットにして、各種対策を推進しても、結果は明らかである。
 中心市街地の活性化策は、大規模商業施設と同じターゲットの中で商圏の維持、拡大を目指して各種対策を推進するのではなく、新たなターゲットを定め、昭和61年当時のように多くの人々が中心街に集う仕掛けが必要となる。

図表3 本県における総合商品販売額の推計

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出典:山梨県工業統計調査 平成19年、平成20年、平成21年のデータを使用し推計

※単位は縦軸が億円、横軸が年

  そのためには、文化と歴史を活かしたまちづくりを進め、観光による交流人口増を目指す道しかない。

3 文化と歴史を活かしたまちづくり

 図表4は、日本政策投資銀行から出された訪日外国人観光客の実数と2015年までの予想数である。実数をみると、リーマンショックや東日本大震災の影響があるが、2003年以降増加傾向にある。また予想数においても、2015年には1,000万人を超え、2020年までには2,500万人[1]を目標としている。また、図表5から本県における外国人観光客の推移をみても本県に訪れる外国人観光客は増加傾向にある。これら外国人観光客の訪日理由[2]としては、「食事(日本食)」、「温泉」、「ショッピング」、「自然、四季、田園風景」、「歴史的、文化的な体験」となっている。本県には、富士山をはじめ、温泉、自然、伝統的な食文化などこれら外国人観光客のニーズに応える資源が揃っている。とりわけ富士山の知名度は抜群で、外国人が日本で行ってみたい場所の上位に必ずランクされている。この富士山を軸に、中心市街地は「歴史的、文化的な体験」と「食事(日本食)」、「ショッピング」を用意すれば良いだけのことである。
 本県では、今後、リニア中央新幹線や中部横断道路の整備が進みアクセス環境も劇的に向上することになる。つまり1,000万人~2,500万人の観光客の中から、数万人~十数万人ほどの観光客が甲府市に訪れるような仕掛けがあれば、十分中心市街地に人が集うようになる。

図表4 訪日外国人数の予測(全国、2016年まで)

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出典:日本政策投資銀行資料

図表5 訪日外国人数の予測(全国、2016年まで)

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出典:やまなし観光推進計画

 次に、国内観光客の動向について、図表6の国内延べ宿泊客数の推移をみると、年間3億人程度で推移していることがわかる。そのうち、本県には4,000万人[3]ほどの観光客が訪れている。そうした中で、図表7において目的別観光客実数推移をみると、本県を訪れる観光客の目的としては、平成19年以降、文化・歴史の項目が増加していることがわかる。
 増加している文化・歴史を目的とした観光客のニーズに応えることにより、4000万人のうち新たに数万人~数十万人のみが中心街に訪れる仕掛けをすれば良いだけである。
 つまり、外国人観光客と国内観光客の双方をターゲットにし、これら観光客のニーズが高いものに触れる機会を作り出せば、中心市街地に人々を呼び込むのは、難しい事ではない。そのニーズに対応したメニューの創出こそ、文化・歴史を活かしたまちづくりなのである。

図表6 国内延べ宿泊客数の推移(2007~2010年まで)

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出典:宿泊旅行を中心とした観光の課題と展望2012年3月
(株)日本政策投資銀行

図表7 目的別観光客実人数の推移 

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出典:山梨県観光動態調査 (平成21年度)

 このまちづくりの方向性としては、すでに幣財団ニュースレター Vol.148【平成22年11月26日発行】新世紀甲府城下町研究会 丸茂 紀彦氏による「小江戸文化の再興による甲府城下町の活性化に向けて」において、甲府城を中心としたまちづくりの方向性が示されている。甲府にある貴重な歴史資源である甲府城を中心としながら、外国人観光客には「城(Castle)、サムライ」という日本が誇る歴史、文化を提供し、国内旅行者には元禄文化を通じた江戸と新府中(甲府)とのつながりなど、本物の歴史に触れる機会の創設を目指す必要がある。甲府城では、今年、鉄門が復元される。この上で、甲府城に天守閣が整備されれば、外国人観光客、国内観光客双方への強烈なアピールになるとともに、甲府の街に風格が生まれることは間違いない。

甲府城整備イメージ図

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新世紀甲府城下町研究会 資料

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 また甲府市には、埋もれた歴史的資源として、神田上水に次いで古い日本で2番目に建設された上水が整備されていた歴史がある。これら資源を活かし、観光客が街を歩けるような(散策したくなる)仕掛けができれば、新たに数十万の観光客が中心街に訪れることなど容易なのである。これら観光客は、飲食・買い物等を行うので、新たなビジネスチャンスが広がり、中心市街地の活性化がなされる。観光客が歩きたい街というのは、住んでいる地域住民にとっても歩ける街であり、地域住民も訪れやすい街になり、相乗効果も期待できる。また、統一性のとれた美しい街並みは地域住民の誇りともなろう。
 文化、歴史を活かしたまちづくりの先には、必ず多くの人が訪れ、来訪者には甲府という街が印象に残る。そして地域の住民も住みやすく、街に誇りが持てる。それだけのポテンシャルを有しているのに活かしきれない。その結果、取り組みが中途半端になってしまう。
 当然、甲府城のさらなる整備や遊歩道、水の道などの整備には予算が必要である。誰が負担をするのか、誰が推進するのかなど課題は多い。これは市民、行政、事業者等が協力しながら推進するしかない。誰かがやるのを待つのではなく、今、やらなければチャンスを逃すことになることを肝に銘じ推進していくのみである。
 中心市街地のまちづくりは大きく前進している。この取り組みを一層推進するためにも、多くの人が集う仕掛けとして文化と歴史を活かしたまちづくりを進める必要がある。


[1] 日本再生戦略(平成24年7月31日閣議決定による) 

[2] 一般社団法人 日本旅行業協会「国籍別訪日外国人が次回に期待したこと」による。
http://www.jata-net.or.jp/data/inbound/06.html

[3] 山梨県観光入込客統計調査報告書 H23年