ヴァンフォーレ甲府をお手本に
毎日新聞No.373 【平成24年10月26日発行】
サッカーJリーグ、ヴァンフォーレ甲府(VF甲府)がJ2において優勝を果たした。この優勝は、J2での無敗記録を更新してのものであり、さらに負け数4(10月26日現在)は、J2の22チーム中で最も負け数の少ないチームでもある。J2の中には、年間予算がVF甲府の2倍以上のチームもある。Jリーグのお荷物とまで言われたチームが2位以下を大きく引き離して優勝したことは、まさに快挙である。
思えば、今シーズンのVF甲府の戦いは順風満帆であったわけではなく、5月6日にはホームスタジアムの試合で、元VF甲府監督の大木武氏が指揮する京都FCに3-0で完敗した。大木氏がVF甲府時代に築いていた「見てくれたお客さんがもう1回見たいと思う攻撃的サッカー」スタイルにほぼ無抵抗の完敗でもあり、この先の戦いを不安視されもした。しかしながら、その後のVF甲府は、現有の戦力で勝つためにはどう戦うのかを体現すべく、試合自体は美しくなくとも各選手が与えられた立場の中で最大限の努力をし、耐えて、耐えて、泥臭くプレーするスタイルを確立した結果、最終的に優勝を勝ち取った。このVF甲府のプレースタイルは、本県経済の戦い方(進む道)を示している。
本県は、予算規模も小さく、人材も限られており、その両方が揃う大都市圏からは、常に山梨県には負けないという上から目線で見られてしまう小さな県である。その本県が全国を相手にして戦うには、選手(企業)が個性を伸ばし、フロント(関係各機関、支援団体)とサポーター(県民、熱狂的支援者)との密接な連携を通じ地道
に泥臭く取り組みを進めるしかない。その結果として、全国の舞台でトップにならなくとも一目置かれる存在であり続ける、それが本県の戦い方(進む道)であろう。
来シーズン、VF甲府はJ1での戦いとなる。戦前から全国トップにならなくともと言ってしまうのは、今シーズン、素晴らしい戦いをしたチームにいささか失礼な気もする。来年の今頃、本県経済の発展には、J1でのVF甲府の戦いをお手本にすべきだ。そうすれば全国を驚かせる戦いができるというコラムが書けるよう健闘を願いたい。頑張れVF甲府。
(山梨総合研究所 主任研究員 古屋 亮)
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