VOL.28「これからの100年に向けて、東京駅の赤レンガ駅舎復活」
1914年に誕生して以来まもなく100年となった2012年10月。東京駅の赤レンガ駅舎が創建時の姿に甦った。
戦後の復興を見つめ続けた歴史的な建築物は、新たな100年に向けて足を踏み出した。
周囲の新しい高層ビルと東京駅のクラシックな佇まいが同居したコントラストも美しい。しかしその風景にばかり見とれていると、この事業を実現させた大きなヒントを見失う。そのコントラストにこそ、空中権の取引が隠されているからだ。
これは平易に言うと、「東京駅が低層な分を、周囲の高層ビルに上乗せしてもよい」というルールで、容積率売買の特例となっている。国の重要文化財にもなっている東京駅と、より高いビルを建設したい周辺ビル群の思惑が見事にマッチングされたようだ。その結果として、500億円といわれる建築事業費の多くをこの取引で賄ったとのことである。
「通過する駅から、集う駅へ」これはTokyo Station City(=東京駅)のキャッチフレーズだが、鉄道の駅には旅愁が漂っていて、人々の心を魅了する。郊外の開発が賑やかな山梨県内ではあるが、今も確かに人は駅を目指して集まるものだ。
同じ10月には大月・猿橋の両駅が110周年を迎えた。地域と共有してきた歴史は、東京駅よりさらに長い。
県都甲府においても、市役所、県庁、図書館と歴史的とも言うべき建築のラッシュが続いている。新しい建築物はまっさらで、時として味気なく映るものだが、これこそが100年後のクラシック、歴史の始まりだと思うと感慨も深くなる。
(研究員 赤沼 丈史)