今、求められる中小企業支援策
毎日新聞No.376 【平成24年12月7日発行】
先日、15周年記念事業として韓国・忠北発展研究院と共催で「成長するアジア市場と中小企業のビジネスモデル」についてシンポジウムを開催した。この中で中小企業支援策について日本側と韓国側の違いが浮かび上がったので紹介したい。
両者が考える中小企業支援の相違は、韓国側の輸出振興・外国資本誘致に対し、日本側は海外進出支援が大きな政策課題となっていたことである。
本県では、県の海外展開・成長分野推進室が中小企業の海外進出支援を行っている。主な支援として①海外で行われる工業製品等の出展支援②中国・タイ・ベトナム各国研究会の開催③海外展開支援アドバイザーの派遣④海外市場開拓セミナーの開催⑤中国・タイ・ベトナム各国市場調査などである。
これに対し忠清北道側は、国内大手、外国資本の誘致に加え①海外バイヤーとの貿易商談会②輸出製品の市場動向調査③中小企業輸出保険支援④内需型企業から輸出型企業への転換支援⑤国際ビジネスに必要な各国語などの通訳・翻訳支援が紹介された。
さて国内の産業空洞化が深刻化し雇用面で影響が出始めている中、最近の風潮が業種を問わず中小企業の海外進出に積極的であることが気掛りである。某紙に「社会保険労務士法人が中小企業のアジア進出を支援、自前でも海外拠点を整備し現地法制度にあった会社設立手続きや人事管理を後押し」との記事があった。これは同業界に至るまで海外展開を考えざるを得ない状況に地方経済が追い込まれている証左であろう。
また、銀行117行の中小企業向け貸出しが伸び悩む中、保有する国債残高は166兆円と前年比10%超の伸びである。金融機関は成長が期待できる分野を見出し、資金供給するのが本来の使命である。しかしその使命を果たす環境にない企業活動の現実が見えてくる。
国内市場縮小を考えると活路を海外展開に求めるのは理解できる。しかし中小企業の「ヒト・モノ・金」という経営資源を考慮した時、軽々に海外進出を煽ることより、今こそ通貨政策や税制、エネルギー問題を含めた国内の企業活動環境を整備し、中小企業を支援することの方が必要ではないだろうか。その意味で韓国忠清北道の中小企業支援策は正鵠を得ていると感じた。
(山梨総合研究所 専務理事 福田 加男)