二つの大会に参加して


毎日新聞No.380 【平成25年2月16日発行】

  先ごろ、甲府市内の同じ場所で2つの異なる「大会」がおこなわれた。先月31日開催の「おもてなしのやまなし県民大会」と、翌1日開催の「美しい県土づくり推進大会」である。
  主催者も参加者層も異なるこれらの大会、続けて開かれたことはおそらく偶然にすぎない。しかし、連日参加してみると、両者に深く通じあう点がみえる気がした。共通点の最たるものは、ともに、住む人が誇りをもって住み続けられ、訪れる人が何度でも来たくなる地域づくりをめざしての取り組みであるということだ。
  大会の形で気運の盛り上げが図られたことでも明らかなように、「おもてなしの推進」も「美しい県土づくり」も、個々の県民への浸透拡大が切実に必要とされている分野である。美しい県土づくり大賞表彰式では、講評の中で「あらゆる県民が表彰状を受けるくらいの勢いで」取り組みが進むことへの期待が表明された。また、おもてなしに関するパネルディスカッションでは「個人のちょっとした振る舞いの変化が地域の向上につながる」とのアピールが盛んにおこなわれていた。

  やや旧聞に属するが、内閣府の「国民生活に関する世論調査(平成24年6月)」によると、物の豊かさより心の豊かさに重きをおきたいと考える人の割合は過去最高の64%となった。経済が長く低迷する中にあって、なお精神的充足を志向する層がこれだけ大きいというのは驚異的とも映る。こうした素地がある限り、居住環境や地域への感性をみがき・表現することは、価値あることとして受け入れられやすいといえそうである。
  もとより普及のための仕掛けは大切だ。前述の大会では、景観そのものの整備のみならずフットパスツアーの展開活動が顕彰されたり、ものがたり絵本の作成が事例紹介されたりしていた。住民の感性を高めるためのソフト事業がますます重要性を増すだろうと予感させる場面だった。  

  さて、冒頭の二大会はいずれも今回で2回目を迎えた年若な行事で、裾野拡大に向けた取り組みは緒に就いたばかり。県内の多様な取り組みが集約・発信される基幹イベントとして、今後の発展に期待したいと思う。

(山梨総合研究所 主任研究員 中村 直樹)