健康都市:治療からウエルネスへ
毎日新聞No.384 【平成25年4月12日発行】
保健・医療・介護などの健康システムの持続可能性が問われている。これまでの健康システムは医療を中心に構築されてきたが、人口構造が変化し、生活習慣病が中心になると、日常生活、日常活動の改善が必要になる。対症療法から予防(食事・運動、禁煙、予防接種~健診・再発予防)への転換が求められ、健康は医療へのフリーアクセスだけでなく、個々人が日常生活を省みて、健康的なライフスタイルを身につけ、健康を自らつくりだすものと考えられるようになっている。
健康は社会的にも、個人生活の中でも重要な目標になり、医療及びウエルネスの双方で製品、サービス、情報などの健康マーケットが拡大し、主要な経済分野となっている。国内外の各地域では、地域が強みをもつ資源・施設インフラ・技術に焦点を当てて、様々な製品・サービスに関する産業クラスターを形成し、産官学連携による健康産業(医療及びウエルネス)の振興を推進している例は多い。
医療費の高い米国では自動車、IT、医療に次いで、ウエルネス産業を1兆ドル規模のビジネスチャンスとみなす向きもある。医療産業は医薬品、医療機器などの病気を持つ人に対する製品・サービスであるのに対し、ウエルネス産業は健康な人々が自発的により健康に、美しくなるための、老化・病気を予防するための製品やサービスを提供する産業である。フィットネス施設、美容・整形、生活改善薬、サプリメント、健康食品などが含まれる。また、医療保険とは異なり、健康機器や健康サービスを給付する新たな健康保険、健康商品・サービスに関する情報提供・相談(E-ヘルス)は将来有望なビジネスチャンスであるとされている。
山梨県内でも、医薬品・化粧品メーカーの立地、製造業の医療機器分野への進出、地域団体のハーブ、薬草を利用した健康食品づくりを目指す動きなど、健康産業の進展が見て取れる。地域の研究・教育機関と連携した健康産業の振興策、森林や温泉などの地域の特色を活かした健康システムの構築とともに、健康政策の一つとして日常の運動に寄与する歩道・自転車道、シルバーカーの利用に利便な環境の整備・改善を期待したい。
(山梨総合研究所 調査研究部長 中田裕久)