公共施設白書
毎日新聞No.389 【平成25年6月21日発行】
今年度に入り「公共施設(マネジメント)白書」という言葉を目にする機会が増えた。県内では南アルプス市の白書が公表されているほか、作成途上や、計画中の自治体もあると聞く。
『公民連携白書2012-2013』によると、“公共施設の建築年、面積、構造など建築物の保全管理に必要な静的な情報だけでなく、施設の管理運営に要するコスト、利用状況といった動的な情報も含め、データの把握や施設間比較を可能にすることで市民と行政が施設の存続・統廃合の判断、運営体制の見直しなどの議論を共有化して、公共施設の更新優先順位、再配置計画の検討を行うためのデータブック”とある。
こうした「白書」のとりまとめが必要な理由としては、高齢化の進展や人口減少と自治体の財政悪化が同時に進行する中で高度経済成長期に多く建設された各種公共施設が徐々に建替えの時期を迎えているという現状が挙げられる。
「白書」の特徴は、施設の様子を面積、利用者、金額といったそれにまつわる「数字」にして表すことである。これにより施設を使える時まで使おうとした場合維持管理費がどれだけかかるか、とか、いざ建て替えの段になった時の費用が把握できる。
また、公共の施設なのに毎回の利用料金を払うことにちょっとした“なぜ?”を感じる方がいらっしゃるかもしれない。小さな疑問とともに財布から出した金額の水準で、はたして施設の運営がどれだけまかなえているのか、という問いにも答えが出ていそうだ。
要は、公共施設にまつわる“トータルコスト”が分かることで、行政はもとより、ここに住んで長い間公共施設とつきあうことになる住民としても“じゃあどうしていけばいいのか”という次のアクションにつながるという意味で、「白書」には自治体と住民のコミュニケーションツールとしての役割が期待される。
その地域に住む人にとって、公共施設への“思い入れ”は数字にできないものである。だからといって、実態をとらえることができなければ、それをどう生かすかという策すら立てられない。「白書」を作ることは社会的背景と地域の実情を踏まえながら、何十年といった時間軸で地域での生活と公共施設のあり方を考えるきっかけとなるだろう。
(山梨総合研究所 主任研究員 佐藤 史章)