VOL.36「1人当たり1,000円」


 富士山の登山者は夏の登山シーズンだけで年間30万人、また、5合目付近には山に登らない観光客も含め、年間260万人が訪れているという。
 平成25年6月、カンボジアで開催された第37回ユネスコ世界遺産委員会において、富士山の世界文化遺産への登録が決定した。今後、さらに富士山を訪れる人が増えることであろう。
 ところで、世界文化遺産登録された名称は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」である。日本と日本の文化を象徴する名山・富士山は、古来から多様な信仰の対象として崇拝されてきたこと、さまざまな芸術の源泉になってきたことが認められ、「人類共通の宝」となったわけだが、これを理解して訪れる方はどれほどいるのだろうか。
 これまでも、富士山登山客が残していった廃棄物や自然破壊などの問題についてはよく耳にした。今回登録されたことで、より一層の保全や整備が求められており、世界遺産委員会からは2016年までに保全状況報告書を提出するよう要請もきている。
 山梨・静岡の自治体や観光業者は、登山客が最も多い7月下旬?8月上旬の10日間、登山者から1人当たり1,000円の協力金を任意で支払ってもらうこととした。集まった資金は環境保全などのために使おうというものだ。
 「人類共通の宝」を守るための協力金と考え、賛同してくれる方は少なくないと思うが、金を払っているんだから、という考えをもつ人が現れないとも限らない。
 この「1人当たり1,000円」という設定をどう受け止めるか、また来夏から本格実施を目指しているという入山料についても動向を気にしていきたい。

(研究員 岡 浩之)