多様化する農業の担い手
毎日新聞No.391 【平成25年7月19日発行】
担い手不足と高齢化という枕詞で語られることの多い農業であるが、最近は山梨県の産業振興ビジョンや、いわゆるアベノミクスにおいて成長産業の一つとして希望とともに語られることが多くなってきた。
実際に、県内農業の中には成長につながる新たな動きがあり、その一部はさらに拡大しつつある。 このような動きは「多様化する農業の担い手」という切り口から解釈すると分かりやすい。
農業の担い手の多様化は、「①就農者の多様化」と「②農業経営体の多様化」という2つの観点から捉えることができる。
まず「①就農者の多様化」であるが、山梨県の調査によると、従前の新規就農者は、学校を卒業してそのまま就農する者とUターン就農者の割合が多かったが、平成10年頃からは県外から新規に就農する者も増加した。
さらに農業に関心を示す者の増加や担い手の確保育成を促進する県行政の施策の効果等もあり、平成21年度の年間新規就農者は30年ぶりに100名に達した。平成24年度には雇用就農含め224名が県内に新規就農している。
また個人の就農者に加え、企業が農業に参入する事例も増え、平成24年度までに76社が県内で農業に参入した。建設業者やワイナリー等が全体の50%以上を占める。
次に「②農業経営体の多様化」であるが、従来家族経営が多い農業経営を法人化する農業者が増えている。法人形態は、株式会社や農事組合法人等があり、作目や農業者の意向によって多様な法人が設立されている。
現在、農業参入した企業を含めて、県内の農業法人は171法人にまで増加し、農業分野における雇用を創出している。
このように、農業の担い手が多様化することで、多くの人材や資本が農業分野に入っていく中、新規就農者がグループ化するとともに、企業や法人と有機的に連携して販路の拡大や商品開発を行おうとするケースや新規就農者を育成していくケースが増えてきている。
今後、農業が成長産業となるためには、こうした農業に携わる者の連携を進め、新しいビジネスを興し、推進する仕組みを構築していくことが必要であろう。
(山梨総合研究所 主任研究員 千野 正章)